2022年12月2日(金)

World Energy Watch

2020年1月9日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

再エネで地域は豊かになるが、そのカラクリは

 番組では木材資源を活かし木工製品を提供している町を取り上げ、さらに小型水力発電、またバイナリー発電と呼ばれる温水で地熱発電をしている町を取りあげていた。発電により収益が上がっていると伝えていたが、簡単に収益が上がるものなのだろうか。この背景には以下概要の固定価格買取制度(FIT)の存在があると想像される。

 200kW以下の小型水力の場合には発電した電気を1kWh当たり34円+税で20年間の買取、15000kW未満の地熱の場合には40円+税で15年間の買取、ウッドチップなどの燃料を間伐材(植林の際に育成を助けるため間引く木材)から製造し、2000kW未満の設備で利用し発電すると40円+税で20年間購入してもらえる。

 2018年度の家庭用電気料金は1kWh当たり平均25円、産業用は17.3円だった。料金には送配電の費用も含まれている。産業用料金が相対的に安いのは工場などに高圧で送電されることが多く、変電と配電が必要ないからだ。送配電の費用を除く発電コストはさらに安い。電源により発電コストは異なるが、主力の石炭、天然ガス火力の今のコストは10円前後だろう。

 火力発電のコストと比較すると、発電した電気を3、4倍の価格で買い取ってもらえるFIT制度の存在が高収益が得られる理由だ。なぜ、そんな高い値段で買い取ってもらえるのか。電気料金を支払う家庭と産業が買取額を負担しているからだ。2019年度の買取総額は3.6兆円、燃料代などが節約できたことから需要家が負担する額は2.4兆円、1kWh当たりにすると全需要家が2.96円を負担している。2012年の制度発足後負担額が急増したことから、FIT制度の見直しによりここ数年負担額は抑制されているが、それでも家庭用電気料金の1割以上はこの負担額だ。

 小型水力、地熱導入はどこの地域でもできるわけではない。適当な水量、地熱という条件があり、その条件を満たす地域が少ないから成立している制度だ。日本の地方の多くがこの制度を利用し電気を作り販売可能ならば、国民負担額は巨額になり、電気料金はとてつもなく上昇する。

 主要国では最もFITを早く導入したドイツは、電気料金上昇に音をあげFITを原則廃止した。それでも一度導入された設備からの電気を長期間買い取る必要がある。ドイツの発電量に占める再エネ比率は、2019年46%に達したが(図-4)、ドイツの家庭用電気料金は世界一高くなり、2019年前半1kWh当たり30.9ユーロセント(37円)に達している。日本の1.5倍だ。標準家庭の賦課金の年間負担額は日本の約3倍、3万円だ。

 再エネ導入は日本の限られた地域でしかできないから、FIT制度が成り立っている。多くの地域で導入が進み再エネ大国日本になれば、国民負担額は巨額になり制度を維持することは不可能になる。もちろん、再エネ設備のコストが下がり、さらに不安定な供給を改善するための蓄電池の価格も大きく下落することも将来起こるだろう。しかし、まだ時間がかかる。

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