2022年11月26日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年4月27日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部 教授

東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所調査本部長、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

リスク要因はQE3

 高成長ではなくとも緩やかな景気回復が持続すれば良いのだが、アメリカ経済の大きなリスクは、景気について周りがあまりに一喜一憂することにある。特に、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が大胆な金融緩和策で景気や金融市場を支えてきただけに、今後その行き過ぎにつながるとすれば心配だ。

 リーマンショック後、FRBはQE1(第1次量的金融緩和)、QE2(第2次量的金融緩和)といった大胆な金融緩和策を通じて、金融危機の深刻化防止、デフレ懸念の払しょくや経済の失速回避に効果を挙げてきた。

(図3) 原油価格と米ダウ平均株価の推移
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 しかし、QE1、QE2は同時にドル安や大きな流動性をもたらし、一方で先進国と新興国の間に通貨戦争と言われる事態を引き起こし、他方でマーケットの金融相場的な動きを助長した。足元でも、ダウ平均株価の動きとWTI(ニューヨーク原油先物)スポット価格の動きは大変よく連動しており(図3)、FRBの金融緩和政策の下で金融相場的な動きが強いことが見て取れる。

 このことは、もしFRBがQE3(第3次量的金融緩和策)に及ぶと、さらにドル安となり、資金供給の増加が資源価格を上昇させかねないことを意味する。そうなると、世界経済を支える新興国景気もおかしくなりかねないし、円高が大きく進めば日本経済にとっても好ましい事態にはならない。

 さすがに、いままでの量的金融緩和策の効果から見て、景気の少々のスローダウンでQE3が容易に発動されるとは思えない。だが、今後の経済指標次第では、一喜一憂を繰り返す市場の景況感が大きく悲観に振れ、QE3への期待が大きく高まる可能性は否定できない。

 まして、今年秋には大統領選挙もある。景気回復がはかばかしくなく、苦戦も予想されるオバマ大統領にとって、QE3が大きな期待となる可能性はある。しかも、巨額の赤字や議会のねじれで大胆な財政政策が打てない現状では、なおさらだ。

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