シルバー民主主義に泣く若者

2012年5月2日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所研究部長

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。*記事はすべて筆者の個人的見解であって、筆者の所属組織とは無関係です。

 本来あるべき改革の姿は、具体的には、(1)寿命の伸長に応じた年金支給開始年齢の引上げを実施する、(2)公的年金を基礎部分のみに簡素化し、国が営む合理性がない報酬比例部分は民営化もしくは民間保険会社が提供する年金で代替する、(3)世代内の所得再分配機能の強化により世代間の所得移転を極力少なくする、ことで現役世代の社会保障負担を軽減した上で、(4)消費税率の引き上げにより出産・育児の社会化を図る、という政策とその実施手順が考えられる。

「シルバー民主主義」による悪循環からの脱却を

 社会保障制度が現状のまま今後も維持されるとすれば、保険料負担が企業にも勤労世代にも重くのしかかる。つまり、企業は高くつく国内雇用を削減したり賃金を減らしたりするなどして対応するため、若者世代の低所得化が一層進むだろう。そうなれば、未婚化傾向が今後も続くし、日本の場合、既婚夫婦が子どもを持つことを勘案すれば、少子化の流れはより強化されて続くことになるだろう。

それは結局、高齢者の多くが生活の拠り所としている社会保障制度を危機に陥れるものであり、多くの高齢者を路頭に迷わせることにつながる。こうした悲惨な事態を未然に防ぐには、逆説的であるが、現行の高齢者優遇をやめて財源を見出し、若い世代への分配を厚くするほかない。

 ただし、高齢既得権者の利益を削減する政策の実行は、後期高齢者医療制度の混乱からも明らかなように、高齢者の政治的パワー、いわゆる「シルバー民主主義」の高まりを考えると、多くの困難に直面するのは間違いない。


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