From NY

2020年1月25日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

最新作のキャスティングはポリティカリーコレクトネス

 その後42年の歳月を経て公開された、完結編の9作目「スカイウォーカーの夜明け」。オリジナルキャストのハリソン・フォードもマーク・ハミルも立派に老人となり、すでに故人となったキャリー・フィッシャーは、なんと過去の作品の未使用映像とデジタル映像を組み合わせている。当時から歳をとっていないのは、(ちょっとくたびれたとはいえ)ドロイドたちとチューバッカだけである。

 今回の作品を観て、しみじみ歳月の経過とともに社会の変化を感じさせたのは、主人公たちのキャスティングの顔ぶれだった。

 ジェダイの最後の後継者は、白人女性のレイ。そのレイに恋心を寄せる準主役は黒人男性のフィン。そのフィンの良き相棒ともいえるのがアジア人女性のローズである。さらに反乱軍の新しいリーダーとなったポーはヒスパニックの男性。「帝国の逆襲」から出演していた黒人俳優、ビリー・ディー・ウイリアムス演じるランド将軍も再登場した。ついでに言うなら、最後に女性同士のキスシーンも出てきた。言ってみるなら、PC(ポリティカリーコレクトネス)のオンパレードのようなこのラインアップ。

 このメンバーを見て思い出したのは、筆者が80年代半ばにニューヨークの出版社で仕事をしたときのことだった。

人種、性別、文化をまんべんなくという考え方

 筆者は美術大学を卒業した直後、ニューヨークの出版社にアシスタントアートディレクターとして就職した。そこで全米向けの教科書のプロダクションにかかわり、編集者たちから指示を受けてページレイアウトを作るのが仕事だった。

 挿絵として6人の子供のイラストが必要になれば、白人が2人、黒人、ヒスパニック、アジア人、ネイティブアメリカンがそれぞれ1人ずつ。男女は半々にして、1人は眼鏡をかけさせ、1人は車椅子で、というような注文が来るのが常だった。

 当時はpolitically correctnessあるいはPC という言葉が一般社会に浸透してきたところだった。直訳すれば「政治的に正しいこと」だが、実際には政治には関係ない。人種、性別、文化などをはじめとする多様性を尊重して受け入れる精神、とでも説明したら良いだろうか。マッチョな白人男性が当然のごとくヒエラルキーのトップに君臨する現在の社会構造を、意識からでも少しずつ変えていこうというムーブメントでもあった。

 あまりにも多様性の度がすぎて非現実的になろうとも、まず形からというのは一つのやり方だ。どんな文化背景、身体的ハンディを抱えた子供も、教科書のイラストに登場することによってコンプレックスを感じることなく、ごくノーマルに社会に溶け込めるように、との意図だろう。現在ならユダヤ人、イスラム教徒の子供たちもイラストの中に登場しているだろう。

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