2023年2月8日(水)

中東を読み解く

2020年3月4日

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サウジ皇太子を“第二のサダト”に

 イスラエル紙やベイルート筋などによると、トランプ大統領はネタニヤフ政権が発足すれば、イスラエルとサウジアラビアなどアラブ諸国との和平樹立のためのアラブ・イスラエル首脳会議開催を狙っているようだ。

 サウジアラビアは石油大国にして、「イスラムの守護者」を自認するアラブの最有力国。「イスラエルとサウジとの和平がなれば、中東和平案を拒否するパレスチナ自治政府への圧力となり、和平案を受け入れざるを得なくなる」(専門家)というのがトランプ政権のヨミだろう。さらに同政権は、この和平により、米国やイスラエル、サウジアラビアの適性国イランへの包囲網強化にしたい考えだ。

 イスラエルとアラブは第二次世界大戦後、4度の中東戦争を交わしてきた。しかし、第4次中東戦争の後の1977年、エジプトのサダト大統領が敵国のイスラエル・エルサレムを電撃訪問。翌年には時のカーター米大統領の調停で、イスラエルのベギン首相とキャンプデービッド合意に署名、エジプト・イスラエルの単独和平が成立した。

 アラブの盟主エジプトがイスラエルと国交を樹立したことから、それ以降、アラブとイスラエルの中東戦争は事実上、不可能になった。アラブ世界ではエジプトに続いてヨルダンがイスラエルと国交を樹立したが、公式には今なお、その大勢はイスラエルを敵国として位置付けたままだ。

 ベイルート筋によると、トランプ大統領はサウジの改革を推進するムハンマド皇太子に“第二のサダト”として「平和の使徒」役を担わせ、自らはカーター氏のキャンプデービッド合意のように「イスラエルとサウジアラビアの和平を調停した歴史的な大統領というレガシーを残したい」のではないかという。無論、再選に強力なアピールになるという思惑もある。

 イスラエル・アラブ首脳会議はカイロでの開催が有力視されている。会議への出席が取り沙汰されているアラブ首脳はエジプト、サウジアラビアの他、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーンといったペルシャ湾岸諸国、ヨルダン、モロッコ、スーダンなどだ。首脳会議実現に向けて、ポンペオ国務長官が各国を訪問するなど根回しに取り組んでいるもよう。

 イスラエルが過去、アラブ諸国と水面下で接触してきたことはもはや、公然とした秘密だ。ネタニヤフ首相自身、2018年にオマーンを訪問した他、国連でモロッコの外相と会談した。今年2月3日には、スーダンの軍事政権のブルハン議長と会談し、南アフリカ行きのイスラエルの民間機がスーダン領空を通過することで合意した。両国正常化交渉も進めるという。

 イスラエルはまた1月末、トランプ大統領の中東和平案の発表と合わせるように、国民がサウジアラビアへ旅行することを初めて容認した。この他、イスラエルの情報機関モサドの高官が湾岸諸国の情報担当者と定期的に接触しているとされる。ネタニヤフ政権が発足すれば、中東世界は大きな地殻変動の波に洗われることになるだろう。

  
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