米国とアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは2月29日、カタールのドーハで和平合意に署名、米駐留軍のアフガン撤退が開始されることになった。米史上最長の18年に及ぶ戦争に終止符を打つ重大な転換点。だが、合意後に恒久的な平和が到来する見通しはない。トランプ大統領の「再選目当ての合意であり、タリバンに勝利を与えた」(アナリスト)との批判も強い。
先行き暗示する和平式典の欠席
今回の合意は、米国にとっては確かに「歴史的な一歩」だ。18年の戦争で、2400人を超える米兵が犠牲となり、2兆ドル(200兆円)もの莫大な戦費が投じられた。こうした戦争に終止符が打たれれば、米国を苦しめてきた重荷は大きく軽減されることになるだろう。
だが、この合意はアフガニスタンに即座に平和をもたらすものではない。「内戦を終結させ、同国に真の平和を実現する」ためのタリバンとアフガン政府の交渉はこれからだ。米国は早くも「アフガニスタンの将来はアフガニスタン人が決める」(ポンペオ国務長官)と交渉への関与には及び腰だ。
合意では、米国は現在約1万2000人のアフガン駐留軍を135日以内に8600人までに削減する。タリバンが和平合意を順守すれば、合意から14カ月以内に残りの米部隊と北大西洋条約機構(NATO)軍も完全撤退する。撤退と引き換えに、タリバンは米国や同盟国の安全に脅威を与えるようなテロ組織と協力しないことを約束。アフガン戦争のきっかけになった国際テロ組織アルカイダとの関係を切る。
また今後のガニ政権とタリバンとの和平交渉については、3月10日に協議を開始すると定め、同日までに政府側がタリバンの捕虜5000人を、タリバン側が政府軍兵士の捕虜1000人を解放することになった。和平交渉では、停戦や統治システム、権力の共有などが話し合われる見通しだ。
合意はハリルザド・アフガン担当特使とタリバンのアブドル・バラダル副代表との間で署名され、ポンペオ国務長官が見守った。これとは別にアフガンの首都カブールでは、ガニ大統領、エスパー国防長官、ストルテンベルグNATO事務総長が出席して式典が行われた。だが、この式典にはタリバン側は欠席し、早くも今後の和平交渉の困難な先行きが暗示されることなった。