中東を読み解く

2020年2月24日

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 2月21日のイラン国会(一院制、定数290)選挙は反米保守強硬派の圧勝となり、ロウハニ大統領を支える穏健派と改革派が惨敗した。ロウハニ政権が経済再建に失敗したことに対する国民の失望が反映された形だ。しかし、この結果は「最大限の圧力作戦」でイランを締め付けるトランプ政権の政策が裏目に出たことを意味し、両国の対立と緊張がさらに高まるのは必至。

集計される投票用紙(REUTERS/AFLO)

テヘランでは全議席を独占

 23日のイラン政府の発表によると、保守強硬派は首都テヘランなどの都市部を含め全土で万遍なく得票し、7割を超える議席を獲得した。最大の選挙区首都テヘランでは30議席のすべてを保守強硬派が独占した。2016年の議会選挙以来、穏健・改革派は122議席を保持していたが、大きく議席を減らすことになった。

 この保守強硬派圧勝の背景には3つの要因が考えられる。第一に、護憲評議会による事前の候補者資格審査で、穏健・改革派の多くがはねられたことだ。護憲評議会はイスラムの教義に照らして候補者の適格性を判断する機関で、保守派に牛耳られている。事前審査では、7000人以上がはねられたが、このうち穏健・改革派の現職90人が含まれ、再選のための立候補が認められなかった。

 この点について、米国のイラン問題担当のブライアン・フック代表は「イランでは、実際の投票前に事実上、秘密裏に選挙が実施された。立候補者の半分の資格を奪っておいて、共和国というのは名ばかりの国だ」と批判、護憲評議会のメンバー5人に制裁を科したことを明らかにした。

 第二に、ロウハニ大統領の開放、国際協調路線を信じてきた有権者が、経済状態が好転せず、政治が変革されないことに無力感と失望を抱き、投票を棄権したことだ。事前審査で穏健・改革派が多数はねられ、選挙前から結果を予測できたことも棄権につながった。裏返せば、ハメネイ師を頂点とするイスラム宗教体制への抗議の意味が込められた棄権だ。投票率は42・57%。1979年のイラン革命以来、最低を記録した。体制への不信感が如実に示された形だ。

 第三に、今年初めのソレイマニ司令官の暗殺事件で、反米感情が依然収まらず、米国との対決姿勢が一貫している保守強硬派への支持が集まったということだろう。保守派の多くの候補者は「私がソレイマニだ」というスローガンを掲げ、米国への報復を強調し、支持集めに奏功した。

 穏健・改革派の支持を受けるロウハニ大統領は今後、極めて難しい政権運営を強いられることになるだろう。国際協調路線は議会の反対で動かず、22年の次期大統領選まで“レームダック”(死に体化)に陥りかねない。早くも大統領やザリフ外相に対する罷免要求が取り沙汰されており、任期半ばで辞任する可能性も指摘されている。

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