2022年8月14日(日)

中東を読み解く

2020年2月24日

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展望なき対立続く

 保守派が米国への対決姿勢を強めることは必至だ。特にテヘラン選挙区でトップ当選したガリバフ元革命防衛隊司令官が新国会議長に就任することが確実視されており、議会が政権の政策を阻止するケースが増えそうだ。ロウハニ大統領は核合意について、制裁を解除することを条件に米国との再交渉を視野に入れていたが、保守強硬派は欧米に依存しない“経済の自立”を主張しており、制裁解除や欧米との交渉をめぐって議会との対立が激化しそう。

 イランは核合意について、米国の離脱後も英独仏中ロの5カ国との間で維持している。しかし、核合意に批判的な保守強硬派の議会が離脱するようロウハニ政権に求める可能性も高い。だが、イランが核合意から離脱し、核開発を進めても、その苦境が好転する見通しはない。逆に欧州諸国からも制裁を科されて「物価高、通貨安、失業増」の三重苦はさらに悪化するだろう。

 イランが欧州との袂を分かち、ロシアと中国に依存しようとしても、両国はトランプ政権ににらまれることを恐れ、イランを経済的に支えるとは考えにくい。米国務省によると、イランの収入源である原油輸出は通常時の20%程度にまで低下し、外貨準備高の90%が凍結されたままだ。経済的な自立を主張する保守強硬派にも苦境打開の展望はない。

 一方のトランプ政権にしても、経済制裁を中心とする最大の圧力作戦でイランを屈服させることは難しくなっており、保守強硬派が支配する新議会の誕生という状況の変化にどう対処していくのか、展望はない。トランプ政権は当初、制裁の圧力を強化すれば、イラン側は核合意の再交渉に応じざるを得ないと楽観的なシナリオを描いていたが、そうはなっていない。

 経済がダメなら軍事力で揺さぶりを掛けようとしても、大国イランの体制は揺るぎそうにない。そもそもトランプ大統領は中東からの軍撤退を主張しており、新たに数十万人規模の兵力が必要になるイランとの戦争に踏み切ることは考えていないだろう。強硬論を唱えているのはあくまでも再選のためだとする見方が強い。

 トランプ政権としては、イラン国内の反政府運動を支援して体制の転換を図りたい考えだが、イランは昨年11月のガソリン価格値上げの際に発生した反政府デモを撤退的に弾圧し、反体制運動の芽をつぶした。反体制運動に対する精神論だけの支援ではハメネイ体制を揺るがすまでには至らないことは明らかだ。大統領選挙が本格化するにつれ、トランプ政権の対イラン政策は「最大の圧力作戦を継続する」以外に選択肢がなくなっている。

 しかし、イランが核開発を本格的に開始すれば、トランプ政権はイスラエルと組んでイランの核施設への攻撃を検討せざるを得なくなるだろう。イランと米国の双方にとって、議会選挙での保守強硬派の勝利は「展望なき対立」を一段と加速する分岐点となるのかも知れない。

  
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