脱炭素バブル したたかな欧州、「やってる感」の日本

2020年4月15日

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木村秀哉 (きむら・ひでや)

ジャーナリスト

経済誌の記者・編集者を経て、今年2月からフリーに。山一證券破綻をスクープするなど金融業界を中心に、企業や経済問題の取材経験が豊富。
  

存在感を増す「物申す株主」
最後にババを引くのは誰だ

 スチュワードシップ・コードは、08年のリーマンショックの反省から、投資先の経営に対する監視など機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンス(行動規範)である。現在、金融庁ではこの日本版スチュワードシップ・コードの改定作業が行われているが、ESG要素を含んだ中長期的な持続可能性を考慮する責任が強調されている。

 受託者責任である投資リターン拡大のために、株主として投資先企業に何をすればいいのか。増配など短期的なリターンではなく、中長期的な視点で持続可能な提案をしながら、企業と対話していく姿勢が求められている。ESG投資の視点からみると、「エンゲージメント(対話、働きかけ)を通じて市場全体のリターンを向上させることは、社会的にも意義があるだろう」と湯山氏は指摘する。

 再生可能エネルギーへの取り組みやCО2削減という目に見える数値化しやすい目標を評価するだけではない。さらに「気候変動やCО2に関する企業業績への影響を財務的にも織り込む動きがある」(欧州系ファンドの責任投資責任者)。

 ESGで活気づく金融業界は、新たなルール作りに奔走している。機関投資家は新たな「物申す株主」として存在感を増しつつある。そして、膨張するマネーは、これからどこへ向かっていくのか。

 株式市場は、いつも投資テーマを探し続けている。過去には、ITブームがあった。その結果としてGAFAに代表される巨大企業に投資が集中し、負け組みの淘汰が進んだ。未公開株投資ブームでは、「せんみつ」(千に投資して三つが成功)という世界で多くの投資家が損失を被った。

 再生可能エネルギーの中でも太陽光発電は一大ブームとなったが、固定価格買取制度(FIT)の縮小とともに去っていった。仮想通貨にいたっては、不祥事もあり、短期間で下火となった。

 投資ブームは、永久に続くことはない。ESG投資は中長期的な視点で運用されるが、長期になればなるほど勝ち組にしか投資は集まらない。投資の世界にサステナブルなどなく、最後に誰かがババをつかむというのが常だ。

 投資の「看板」にESGが掲げられただけで、企業の株価は上がらず、環境対策も進まず、結局、手数料を稼いだ金融機関だけが笑う。そんな結果になってはいけない。

Wedge4月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■脱炭素バブル  したたかな欧州、「やってる感」の日本
Part 1  「脱炭素」ブームの真相 欧州の企みに翻弄される日本
Part 2    再エネ買取制度の抜本改正は国民負担低減に寄与するか?
Part 3  「建設ラッシュ」の洋上風力 普及に向け越えるべき荒波
Part 4    水素社会の理想と現実「死の谷」を越えられるか
Column    世界の水素ビジョンは日本と違う
Column    クリーンエネルギーでは鉄とセメントは作れない
Part 5  「環境」で稼ぐ金融業界 ESG投資はサステナブルか?

  
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◆Wedge2020年4月号より

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