2023年1月28日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年3月28日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「経済ファースト、コロナセカンド」

 第3に、方針転換です。前述したガイドラインの柱になっているソーシャル・ディスタンス(他人との距離を充分とること)に関して、方針転換に踏み切る可能性が高まってきました。おそらくトランプ大統領は、この感染抑止のガイドラインが経済の停滞を招き、再選に対する阻害要因に成りかねないと判断したのでしょう。

 米ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領の方針転換に関して、同大統領は感染症専門医の助言ではなく、経済界の声に耳を傾けるようになったと報道しています。経済界に接近し、感染症専門医との距離を開け始めたのです。

 ということは、トランプ大統領は「経済ファースト、コロナセカンド」の道を選択したといえます。言い換えれば、コロナ対策よりも、再選のための選挙対策を優先しました。

責任はオバマ前大統領

 米メディアはトランプ政権の新型コロナウイルス感染に関して初動対応の遅れと、急速な感染拡大について批判を強めています。それに対して、トランプ大統領は「崩壊した時代遅れのシステムを(オバマ政権から)受け継いだからだ」と述べて反論しています。新型コロナウイルス感染増加に即座に対応できなかった理由は、バラク・オバマ前大統領の責任だということになります。

 ただメディアは、「事実」で対抗しています。言うまでもなく、グローバルな感染拡大は安全保障に直結します。ところがトランプ政権は2018年5月、米国家安全保障会議(NSC)にあった世界的な感染症監視部隊を解散しました。オバマ政権下で、この部隊は中国におけるインフルエンザ及びアンゴラの黄熱病を監視していました。トランプ大統領は、オバマ政権時代に約250人いたNSCの職員を110人程度まで削減しました。おそらく、その中にこの部隊の職員が含まれていたのでしょう。

 初動対応に送れた理由がここにもありました。感染症監視部隊解散こそが、その最大理由だったのかもしれません。

 あるホワイトハウス担当記者が、トランプ大統領に感染症監視部隊の解散に関する質問をしました。するとトランプ氏は、アキレスけんをつかれた質問に対して怒り、「卑劣な質問だ」と言って回答しませんでした。

 その一方で、米議会では政権内における感染症監視部隊の復活を望む動きがあります。民主党のジェリー・コノリー下院議員(南部バージニア州第11選挙区選出)と共和党のスティーブ・シャボット下院議員(中西部オハイオ州第1選挙区選出)は、超党派で監視部隊を政権内に設置する「グローバル健康安全法案」を提出しました。

 「新型コロナウイルス感染拡大のスピードを遅らせる15日間のガイドライン」の緩和及び感染症病監視部隊の解散で、トランプ大統領の危機管理能力が問われています。


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