2023年12月6日(水)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年3月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「新型コロナウイルス感染拡大で見えてきたトランプの新たな再選戦略」です。新型コロナウイルス感染拡大によって、ドナルド・トランプ米大統領は再選戦略の見直しを余儀なくされています。そこで飛び出したのが、例の「中国ウイルス」発言です。

 そこで本稿では、トランプ大統領の新たな再選戦略を「スポークスマン」「中国ウイルス」「トランプ小切手」「米軍最高司令官」「豚インフルエンザ」及び「緊急テレビ電話会議」に整理して分析します。

22日、記者会見に臨むトランプ大統領( REUTERS/AFLO)

スポークスマン

 ホワイトハウスでは報道官ではなく、トランプ大統領自らがスポークスマンになり、新型コロナウイルス対策に関する記者会見を連日開いています。自分がスポークスマンにならないと記者団からの質問に対応できないと考えているのでしょう。加えて、大統領自ら陣頭指揮を執っている姿をアピールする狙いもあります。

 では危機的状況下において、リーダーはどのようなリーダーシップをとる必要があるのでしょうか。東日本大震災が発生したとき、筆者は米下院外交委員会に所属するジェリー・コノリー議員(民主党・南部バージニア州第11選挙区選出)に危機管理に関してインタビューを行いました。その際、コノリー議員はスポークスマンが国民から信頼を勝ち取ることの重要性を強調しました。

 米公共ラジオ(NPR)、公共放送(PBS)及びマリスト大学(東部ニューヨーク州)が実施した共同世論調査(2020年3月13-14日実施)によれば、「トランプ大統領の新型コロナウイルスに関する情報を信頼しますか」という質問に、37%が「信頼する」と回答したのに対して、60%が「信頼しない」と答えました。同調査におけるトランプ大統領の支持率は43%なので、信頼に関して6ポイント低い結果が出ています。

 一方、米メディアが報道する新型コロナウイルスの情報について、50%が「信頼する」と回答しています。最も信頼度が高かったのは州及び市が提供する情報で、72%が「信頼する」と答えています。つまり、スポークスマンとしてのトランプ大統領は、米国民から新型コロナウイルスの情報に関して信頼をまだ勝ち取っていないということになります。


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