2022年8月18日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年3月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「中国ウイルス」発言の思惑

 トランプ大統領は記者会見を行うたびに、中国武漢で発生した新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んで物議を醸しています。ホワイトハウスの記者団から「人種差別」「外国人嫌い」ではないかとの質問に対して、トランプ大統領は発言を撤回するどころか、「中国ウイルス」を連発しています。この発言には少なくとも3つの思惑があります。

 第1に、トランプ支持者の熱意を向上させ維持することです。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、彼らの熱意向上のために利用してきた大規模集会が開催できなくなったからです。

 これまで筆者は各州で開催されたトランプ集会に参加し、支持者とコミュニケーションを図ってきました。彼らは「中国は米国を食い物にしてきた」「中国は米国の雇用を潰した」「中国は知的財産権を盗んだ」と述べて、中国を激しく批判します。そこでトランプ大統領は「中国嫌い」の支持者の熱意を向上させ、維持していくために「中国ウイルス」発言に踏み切ったフシがあります。

 第2に、怒りの矛先を中国人に向けることです。米国内における感染者数及び死者数は増加傾向にあります。明らかにホワイトハウスはコントロールできていません。

 米大統領選挙の現地調査のため筆者は3月13日、中西部オハイオ州コロンバスに滞在していました。トランプ大統領は同日、ホワイトハウスの記者団に対して全米の死者数は32人と語りました。ところが現在は200人を超えています。感染者数は一気に3万1000人を突破しました。

 このような危機的状況下で、トランプ大統領は中国人をスケープゴート(身代わり)にして、米国民の怒りをホワイトハウスではなく、中国に向けようとしたことは明らかです。前回の大統領選挙では不法移民を追放し、「国境の壁」建設を実現するためにメキシコ人がスケープゴートになりました。今回は中国人です。

 第3に、票を獲得することです。周知の通り、米国では新型コロナウイルス感染拡大にり、レストランやバーなどが閉鎖に追い込まれました。外食産業に加えて、航空、クルーズ、ホテルなどの各産業も深刻な打撃を受けています。当然、被害を被った米国民は中国人に対して多かれ少なかれ否定的な感情を抱くでしょう。

 トランプ大統領はその心理につけ込み、自身のツイッターに、「猛威を振るう中国ウイルスは、あなたの過失ではない」と投稿し、中国人の責任であるというメッセージを発信しました。「中国叩き」によって票を伸ばし、このコロナ危機を乗り切って、支持者拡大につなげることが最終目的です。

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