スーパーチューズデー、民主党の大統領候補選びは、10勝4敗でジョー・バイデン候補が勝利した。代議員数の数でもバイデン候補が566人、バーニーサンダース候補が501人となった。バイデン候補は、緒戦に苦しんで「撤退説」もささやかれていたが、息を吹き返した格好だ。一方で、大富豪マイケル・ブルームバーグ候補は撤退を表明し、バイデン候補支持を明らかにした。この結果に、最も肝を冷やしているのは、他ならぬトランプ大統領だ。
明治大学政治経済学部海野素央教授は、
「サウスカロライナの勝利で得たバイデン候補の勢いは想像以上でした。まさに、〝ゲームチェンジャー〟となりました。アーカンソー、アラバマ、テネシー、バージニア、ノースカロライナ州はアフリカ系アメリカ人が多いので、バイデン候補の勝利はある程度予想できました。
ブルームバーグ候補の得票が予想以上に伸びなかったことがこの結果につながったと思います。バイデン候補の票を奪うかと思いきや、そうはなりませんでした。
一方でサンダース候補は、リードしていたマサチューセッツ州などで敗北しました。これについては、同じ左派であるエリザベス・ウォーレン候補に足を引っ張られた形になりました。
ただ、テキサス州でバイデン候補が、世論調査をひっくり返して勝利したことは、勢いに加えて、ピート・ブティジェッジ候補と、エイミー・クロブシャー候補が、スーパーチューズデーの前に撤退を宣言して、バイデン陣営に加わったことも大きかったと思います。中道派が連合を組むということで、メディアなどでバイデン候補の露出が一気に増えました。これが、誰に投票すべきか迷っていた人を動かしたのではないかと思います」
いずれにしても、これで民主党の大統領選びは、バイデン候補vsサンダース候補の一騎打ちに絞られることになった。海野教授は、対立構造をキーワードであげる。
・アフリカ系 vs ヒスパニック系
・中高年 vs 若者
・現状維持 vs 改革
・現実 vs 非現実
カギを握るラストベルト
それでは、今後の展開はどうなるのだろうか。カギを握るのは「ラストベルト」だと、海野教授は指摘する。3月10日ミシガン州、同17日オハイオ州、4月7日ウィスコンシン州、同28日ペンシルベニア州だ。2016年の大統領選挙では、この4州でトランプ大統領が勝利した。しかし、このなかの「ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア」はトランプ大統領の最大のアキレスけんでもある。つまり、これらの3州を落とせば、トランプ大統領は勝つことができないのだ。
というのも、テキサスをはじめとした「赤い州=共和党=トランプ大統領」、カリフォルニアをはじめとした「青い州=民主党」は、ほぼ固定されている。ミシガン、ウィスコンシンなどの「スイングステイト」と呼ばれる州だけが、どちらに転ぶが分からない状況になっていて、16年の大統領選挙でも、トランプ大統領は、これらの州でかろうじて勝利することで、大統領選挙を制した。
だからこそ、民主党の予備選でも、この「ラストベルト」で力強く勝利した候補こそが、トランプ大統領を打ち負かすことができる候補者として認められるわけだ。