2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2020年3月4日

 明治大学政治経済学部の海野素央教授は、「一般論ですが」と前置きしたうえで「日本の若者は恵まれていると思いました」と、2020年最初のアメリカ調査を振り返った。

 3月3日のスーパーチューズデー直前まで、西部アリゾナ州、ネバダ州、南部サウスカロライナ州で、トランプ大統領の集会、民主党バーニー・サンダース大統領候補の選挙集会、戸別訪問、選対での投票呼びかけを研究の一貫として行った。

 サウスカロライナ州では、ジョー・バイデン候補に敗れたものの、それまでの3州でサンダース候補は勝利した。その原動力となったのが、学生ローンに苦しむ若者たちだ。

南部サウスカロライナ州コロンビアで演説を行うサンダース候補(海野教授撮影)

 そんな若者の一人、白人女性のアリさん(31)と共に海野教授は、サウスカロライナ州コロンビアで開催されたサンダース集会で「障害を持つアメリカ人法(ADA: Americans with Disabilities Act of 1990)」に適応する人のサポートをした。

 彼女は「私には1万ドル(100万円)の学生ローンが残っているの。だから、『ローンの帳消』を公約してくれるバーニーを支持するのよ」と、教えてくれたという。南部サウスカロライナとはいっても、海野教授が訪れた2月の最終週の1週間は、10度を下回る天候だった。それでも、アリさんはTシャツ1枚の姿だった。

 アリさんは、地元の短大を卒業したものの、就職することがかなわなかった。それからは、「時給仕事の連続」だったという。いまも、食事の宅配など、単発仕事(ギグ・ジョブ)の掛け持ちでなんとか食い付ないでいるという。

 「バーなどで働けば、1日で4、500ドルは稼ぐことができるの。でも、深夜まで働くのは身体的にも苦しくて……」と、力なく話すアリさんを見て、「日本の若者は恵まれている」と、海野教授は思わず考えてしまったという。

 報道などによれば、アメリカの学生ローンの残高は1・4兆ドル(約160兆円)に達している。日本の学生支援機構の貸与残高は、2016年末で約9兆円なので、その規模の違いが分かる。

 「サンダース陣営で出会った多くの若者が、『学生ローンの債務帳消』という公約に魅力を感じているようでした」と、海野教授。

演説に向かうサンダース候補(海野教授撮影@南部サウスカロライナ州コロンビア)

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