2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年2月26日

  今回のテーマは、「弱点を克服したサンダース候補」です。米民主党候補指名争いを戦っているバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)は2月22日、西部ネバダ州で開催された党員集会で勝利を収めました。

 筆者は党員集会の2日前に、研究の一環としてネバダ州ラスベガスの南西部にあるサンダース選対に入り、電話による支持要請を行いました。そこで本稿では、選対での出来事を紹介しながら、サンダーズ氏勝利の原因を探ってみます。

「社会主義者だからなんて言わないで」

サンダース選対の入り口(筆者撮影@西部ネバダ州ラスベガス)

 サンダース大統領候補はラスベカスだけで8つの選対を置き、資金と人材を投入しました。筆者が20日、南西部にあるサンダース選対を訪問すると、熱意のある20代の若者が党員集会に向かって準備を行っていました。

 早速スタッフに自己紹介をした後、筆者はアジア系米国人及び太平洋諸島の有権者を対象に選挙運動を行うチーム(AAPI)に入りました。チームリーダーはベトナム系米国人女性のアンジーさんです。彼女は昨年12月に、サンダース陣営の「オーガナイザー」として雇われました。

 オーガナイザーは、ボランティアの草の根運動員をまとめて、彼らが円滑に戸別訪問や電話による支持要請を行うことができるように支援します。

党員集会の前日にGOTVの集会で演説をするサンダース大統領候補(筆者撮影@西部ネバダ州ラスベガス)

 アンジーさんは電話で標的となっている有権者に語る内容を説明すると、筆者に突然質問を投げかけてきました。

 「なぜあなたはバーニーを応援しているの?」

 筆者は思わずこう回答してしまいました。

 「社会主義者だらです」

 一瞬、アンジーさんとの会話に沈黙が生まれました。2人の会話を聞いていた他の運動員も沈黙してしまったのです。

 「しまった!」と心の中で思い、「バーニーは大学の授業料を無償化して、学生ローンを帳消しにするからです。労働者の賃金を上げるからです」と言ってフォローしました。

 アンジーさんは安心した表情を浮かべましたが、筆者にこう語って釘を刺しました。

 「社会主義者だなんて有権者に言わないで」

 サンダース候補は自身を民主社会主義と呼んでいます。サンダース支持の若者は社会主義を肯定的に捉えていますが、選対の中では同主義に敏感になっていました。米国社会では、大抵の有権者は社会主義を受容しないからでしょう。

 米NBC ニュース及び、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の共同世論調査(20年2月14-17日実施)では、社会主義者の候補に対して37%が「快適」と答えました。社会主義に「不快」を示す有権者が多数派ですが、約4割が肯定的に捉えているのには驚きです。


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