2024年4月26日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年2月26日

社会主義と国民皆保険

 サンダース支持者は25歳以上のミレニアル世代が主流であるというイメージがあります。ただ、アンジーさんが筆者に渡した有権者名簿をみると、サンダース陣営が標的としている若者には20歳前後の「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代が多く含まれていました。ミレニアル世代よりもまだ若い世代です。彼らはインターネットが日常茶飯事の世代で、一般に「デジタルネイティブ」と言われています。

 上で紹介したボランティアの運動員のパブロフさんは21歳で、正しくジェネレーションZに属します。彼にこの世代の特徴を尋ねると、「社会主義者」と一言で回答しました。

 トランプ支持者はサンダース氏の国民皆保険導入を社会主義の象徴として批判します。しかし、サンダース陣営が党員集会前日にラスベガスで開催した「投票に行こう(GOTV:Get Out The Vote)」の集会にボランティアの運動員として参加したクリスさんは、国民皆保険を必要としていました。

 「私には持病があり、月に3万ドル(約335万円)の医療費がかかります。今のところ、親の保険に加入しているので医療費をカバーできます。しかし、オバマケア(バラク・オバマ前大統領の医療保険制度改革)では親の保険に加入できる年齢が26歳までです。私は今年12月に26歳になります。その後、どうなるのかとても不安です。バーニーが勝って、国民皆保険を必ず導入してもらいたいです」

 クリスさんにとって、今回の大統領選挙は医療費の支払いの継続ができるか否かを決める極めて特別な選挙になっています。

多人種・多民族の連合軍

 4年前の民主党党員集会及び予備選挙において、サンダース候補は非白人の有権者の支持を得られないことが弱点であると指摘されました。しかし、今回は状況が異なっています。

選対ではサンダース上院議員の政策が多言語で説明されていた(筆者撮影@西部ネバダ州ラスベガス)

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙及び、NBCニュースが行った共同世論調査(2020年2月14-18日実施)によれば、アフリカ系有権者の支持率においてサンダース候補は、ジョー・バイデン前副大統領とほぼ互角の勝負をしています。これまで維持してきたアフリカ系有権者におけるバイデン氏のアドバンテージが消えつつあるという意味です。

 今回のネバダ州党員集会におけるNBCニュースの出口調査では、アフリカ系有権者の36%がサンダース候補、27%がバイデン候補を支持しました。ちなみに、16年前の同州での党員集会で、サンダース氏は76%のアフリカ系有権者をヒラリー・クリントン元国務長官に奪われました。

 おそらくサンダース陣営は、4年前の教訓を活かして非白人票を獲得するための対策を練ったのでしょう。前述しましたが、選対にはアジア系の有権者を標的にしたチームが存在していました。ラスベガス在住のエチオピア系の有権者を党員集会に動員するスタッフもいました。同陣営は多人種・多民族の連合軍を組んで党員集会に臨みました。

 その結果、4年前の民主党候補指名争いでは人種や民族の多様性に富んだ州で、ヒラリー・クリントン前国務長官に敗れたサンダース候補は、今回の選挙で非白人票を獲得し勝利しました。明らかにサンダース氏は、16年の民主党党員集会及び予備選挙における弱点を克服しています。

  
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