今回のテーマは、「トランプ支持者がみる民主党大統領候補」です。ドナルド・トランプ米大統領は2月19日、西部アリゾナ州フェニックスで支持者を集めた集会を開催しました。現地に入り、トランプ支持者を対象に彼らが民主党大統領候補をどのようにみているのかについて、現地ヒアリング調査を実施しました。そこで本稿では、支持者の声を紹介します。
ベストなシナリオ
集会前日の17時30分に会場の下見に行くと、すでに約150人がテントを張ったり、マットを敷いて列を作っていました。イベント開始時間は、翌日19時からです。筆者は13時間30分並び、ようやく入場できました。トランプ大統領は確実に支持者の熱意を維持しています。
列の先頭にリピーターのサンドラさんが並んでいました。筆者は中西部ミシガン州グランドラピッズ及び南部フロリダ州オーランドでのトランプ集会で彼女を見かけています。彼女は今回の集会が35回目になると語っていました。
ミシガン州のウォルマートで仕事をしているサンドラさんは、筆者の質問に率直に答えてくれました。
「バーニー(サンダース上院議員)が民主党候補になれば、トランプは勝ちます。米国は社会主義者を大統領には選びません。(マイク)ブルームバーグ(前ニューヨーク市長)はトランプのようにディベートのスキルもカリスマ性もありません。トランプは彼を『ミニ・マイク』と揶揄しているように小柄です。ただ、彼は資金力が非常に豊富です。ブルームバーグはトランプの脅威になる可能性があります」
サンドラさんは「ブルームバーグは選挙を買収している」と非難し、同氏の資金力をかなり警戒していました。
続けて彼女は、ブルームバーク氏の問題点を指摘しました。
「彼が導入した『ストップ・アンド・フリスク(stop and frisk)』は問題があります」
「ストップ・アンド・フリスク」とは、警察官が疑わしいと判断した人物を一時的に拘束して、質問をし、ボディチェックを行うという取り締まり政策です。つまり、主観的判断に拠るところが大きい訳です。
その結果、アフリカ系やヒスパニック系(中南米系)といった少数派が標的になりました。ステレオタイプ(固定観念)に基づいた取り締まりが行われたことは容易に想像できます。
「ブルームバーグは民主党候補になったら、副大統領候補にヒラリー(クリントン)を指名すると語ったそうです」
サンドラさんは笑みを浮かべて語りました。仮にそうなれば、クリントン元国務長官に対する嫌悪感が強いトランプ支持者をさらに熱狂的にすることは間違いありません。
ピート・ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長についても、サンドラさんはコメントをしてくれました。
「米国民は同性愛者を大統領に選びません。夫がファーストレディになるのは考えられません。キリスト教福音派はブティジェッジを受け入れません」
筆者が米国社会において、同性愛者が大統領になる公算について質問を続けると、サンドラさんはこう言って遮りました。
「あなた、あまり大きな声で同性愛者のことを話さないでください。あそこにいる顎髭をはやした男性も同性愛者です。トランプ支持者には少ないですが、同性愛者がいます」
サンドラさんは自らトピックを変えて、トランプ大統領にとってベストなシナリオを明かしてくれました。
「私は1人の民主党候補が予備選挙で圧勝して代議員数を獲得するのではなく、複数の候補が勝って獲得代議員数が分散することを望んでいます。そうなれば、どの候補も大統領候補になるために必要な過半数の獲得議員数1991に達することができず、7月のミルウォーキー(中西部ウィスコンシン州)での全国党大会にもつれ込みます。民主党はそこでブローカー・コンベンションを開き、大統領候補を決めます。民主党は混乱するでしょう。党大会を管理できないことを米国民にさらすことになります。アイオワ州の党員集会でもそうでした。党大会や党員集会を管理できない党に、国の統治を任せることができるのかと、米国民は民主党に不安を抱きます」
サンドラさんは再度民主党が混乱することが、トランプ大統領の選挙を有利に進めると考えていました。