忘れてはならない米中リスク
さらに言えば、保護主義も、中国での生産拠点の残留・強化に拍車をかけている。保護主義が一層進めば、国境を超えた取引はより難しくなるため、地産地消型の生産拠点の確保が必要となる。その意味で需要増が継続するという見通しのもとでは、中国を離れることが難しいのが現実だ。
もちろん、企業によっては中国経済の崩壊や、超減速シナリオを織り込む形で、移転を考える企業もあるだろう。更に言えば、米中の「技術覇権」争いが激化すれば、高付加価値な技術を中国で生み出しているということを理由に、米国市場へのアクセスを制限される可能性もある。これまでの米中摩擦の激化を考えれば、十分に想定しておく必要のあるリスクであろう。
だが、ある製造業中小企業の次の一言は印象的であった。「数年後の米中リスクを考える必要があるのはわかる。だがそれまでの数年間、従業員を誰が養っていくのか。その数年伸びている国を無視することはできない。」
理想的には国際政治の狭間でうまく舵取りをすることが必要だ。そのためには結局のところ、どのような状況になろうとも、両大国ともに必要とされる技術・サービスを開発するしかない。そのような企業を排除することはできないからだ。かつての日本企業の多くがそうであったように、である。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。