2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2020年4月28日

 日本では雇用を維持しながら休業した企業を国が支援する雇用調整助成金を、コロナ禍に対応して拡充した。厚労省には4月17日までに12万件以上の相談が寄せられたが、最終的に申請に至ったのは1000件にも満たない。「提出書類が煩雑すぎて中小零細企業は用意できない」と元厚労相はいう。

 売り上げが急減した中小零細企業への現金給付にしても、中小企業向けに200万円、個人事業主へは100万円の支給となるが、予算額は合わせて2兆円。地方自治体の休業補償に対する国からの支援も打ち出したが、交付金の規模は1兆円である。

 日本企業は米国企業のようにドライなリストラをせず、過剰雇用を抱えて我慢しているのだから、もう少し手厚く支援すべきだと思える。それでも国民1人当たり10万円にのぼる現金給付で12兆円あまりのお金を配るなど、日本政府も必死に景気の下支えを図っている。一連のコロナ対策はGDPの3.3%ぶんに相当すると内閣府は試算する。

 各国で政府が大規模な財政出動に踏み切れば、財政赤字が膨らみ、国債発行が増える。それでも政府の膨張を批判する声は鳴りを潜めた。家計と企業が所得を失い、消費と投資が蒸発するなか、今や経済の命綱は政府を置いてほかにない。多くの人たちはそう実感しているからだ。

コロナ・リスクの国有化

 財政赤字と国債増発をひとりで丸のみしているのは、各国の中央銀行である。パウエル議長の率いる米連邦準備理事会(FRB)は3月23日に腹をくくり、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の購入額を無制限にすると決めた。青天井での国債買い入れである。

 その結果、FRBの資産規模は4月22日時点で6.5兆ドルと空前の規模に膨れ上がり、リーマン・ショック後のピークである4.5兆ドルを大きく上回った。2月末の保有資産は4.1兆ドルだったから、コロナ対策で発行が急増する米国債を、FRBがどんどん飲み込んでいることが分かる。

 見方を変えれば、FRBがお札を刷って、米政府が企業や家計にそのお金を配っている。経済学者フリードマンのいうヘリコプターマネー政策を、今の米国はとっているともいえる。1930年代の大不況下に登場したケインズ政策の現代版であり、昭和恐慌下で高橋是清蔵相が採用した高橋財政の米国版ともいえる。

 財政・金融政策の規模が巨大なばかりでない。コロナ禍は企業と政府の関係をもガラリと変えようとしている。資金繰りの面で企業活動を支え、航空や自動車など雇用の裾野の広い産業については、場合によっては政府の資本参加(株式取得)も視野に入る。米国や欧州は「コロナ・リスクの国有化」に乗り出そうとしているのだ。

 米企業に医療品や医療器具の生産を命じるために、トランプ大統領は1950年の朝鮮戦争に際して制定された国防生産法を復活させた。コロナとの闘いはまさに有事であり戦時なのだ。そこへ行くと日本は緊急事態措置といっても、基本は平時モードといえる。


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