定年バックパッカー海外放浪記

2020年5月3日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2019.6.5~7.22 48日間 総費用24万円〈航空券含む〉)

欧州で増えているベトナム料理店

『青の教会』として知られる聖アルジュベタ教会

 7月12日、スロバキアの首都ブラチスラバはドナウ川沿いに中世の街並み残る古都。通称『青の教会』(聖アルジュベタ教会)を見学した帰りにベトナム料理のレストランを見つけた。お持ち帰り(テークアウト)もやっている庶民的な店だ。

 欧州では近年中国大陸から移住した新華僑が営む中華レストランが急増しているが、今回の旅行では北イタリア、リュブリャナ、ブダペスト、プラハさらにはポーランドでも新しいベトナム料理店を見かけた。

 欧州でベトナム人といえば、筆者が先ず思い浮かんだのはベトナム戦争に伴うベトナム難民及びその子供世代である。ドイツや英国では人道的見地からベトナム難民を数万人単位で受入れた過去がある。彼ら難民一世の世代が欧州に渡ってから40年以上経過している。

 数年前にベトナム南部の高原の町ダラットで知り合ったベトナム系ドイツ人の女学生はドイツに定住したベトナム難民の両親を持つベトナム難民二世であった。

 もう一つの流れとして旧ソ連邦時代にベトナムから労働者として東ドイツや東欧諸国などに渡ったベトナム人がそのまま定住したケースである。

 いずれにせよベトナム料理店の経営者がどのような事情から遠い異国に店を開いたのか興味を抱いた。

ベトナム料理店のオーナーはベトナムからの新移民

 店内に入ると午後3時過ぎで客はいなかった。カウンターに女将らしき女性がいたので挨拶したら簡単な英語は理解できるようだった。調理場でディナーの下拵えをしている旦那と、さらにベトナムの故郷から来た親戚の娘さんと三人で店を切り盛りしている。

 夫婦はベトナム中部ダナン近郊の出身。最初に旦那が2007年に欧州に出稼ぎのため渡航。旦那は現在35才なので23才で渡欧したことになる。10年近く欧州で働いて資金を貯めて2年前に現在の店を開業。

 旦那より若干若い奥さんは2014年、即ち5年前に渡欧して働きながら開業準備を手伝ったとのこと。店が軌道に乗って人手が足りなくなったので最近故郷から親戚の娘さんを呼んだという。

 ベトナム人の勤勉ぶりは比類がない。何しろ米国と総力戦を戦い抜いて勝利した国民である。ベトナム料理店の主人も渡欧後10年間小さなアパートを数人の仲間とシェアして建設作業、荷物運搬、解体作業などを転々としながら資金を貯めたという。

 奥さんの話では口コミにより欧州に出稼ぎにくるベトナム人は年々増えているという。

ベトナム人若年労働者の海外出稼ぎ・移住はメガ・トレンド

 夫婦の物語は中国の新華僑が欧米でスモールビジネスを展開するパターンと全く同じであった。先ずは出稼ぎから初めて小さな商いをスタート。そして家族で移住する。

 いずれにせよ旧ソ連邦時代の東欧圏へのベトナム人労働者、ベトナム戦争によるベトナム難民とは全く別の新しいベトナム人の欧州移住の流れがあることが理解できた。

 2019年5月台湾南東部の離島小琉球を訪れた時、食堂のメニューに海鮮フォーや春巻きなどベトナム料理が並んでいた。オーナーの30代の夫婦はベトナム出身であった。台湾はベトナムと地理的に近いという地の利もあり多数の若者がベトナムから労働者として出稼ぎに来ていると若女将から聞いた。

 日本でも技能実習生や日本語学校学生という資格で入国してから失踪して闇労働市場で働くベトナムの若者が問題になっている。

 ベトナムは総人口が1億人に迫っている。年々経済成長が続いているが依然として国内産業基盤が弱く若年労働者の失業が深刻な問題になっている。失業対策と若者の不満解消、海外送金による外貨獲得という政策目的のためにベトナム政府は若者の海外進出を容認奨励しているようだ。

 2019年秋に英国で欧州大陸から輸送されてきた冷凍コンテナ内で29人の密航ベトナム人若者が死体で発見されたというニュースが記憶に新しい。

 日本、韓国、台湾などアジア諸国だけでなく、出稼ぎや移住をめざす欧州への合法非合法のベトナム人渡航者が増えるなか、ブラチスラバの夫婦は典型的な移住成功者だったのだ。

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