ザグレブの無料野外コンサート、二者択一の選択問題
6月22日夕刻、オーストリア・ハンガリー帝国時代の面影を残すクロアチアの首都ザグレブ。ホステルの美人受付嬢によると中央広場で無料コンサートがあるとの耳寄り情報。
特設ステージはかなり本格的。午後8時の開演の30分前にはステージ前の芝生にはすでに数千人が座っていた。どうせならステージ近くにしようと前に行くと、なんと中央通路の最前列の両脇が空いていた。
通路の左側には中国系と思しき五分刈りのガタイの大きいお兄さんが大型望遠レンズを装着したニコンの一眼レフを抱えて憮然と座っていた。通路の右側には“いい感じ”の女学生風二人組がおしゃべりしていた。
残念なことにオジサンの見聞では、こうした究極の二者択一では、なんとなく遠慮して左を選択する日本の若い男性旅行者が少なくない。
躊躇なく右を選択して積極果敢に“旅のストーリー”を広げなければならないというのがオジサンの“旅の哲学”である。
女学生風二人組の右側を選び、持参したピクニックシートを取り出した。午後にわか雨が降ったので芝生が湿っていると予想して持参してきたのだ。
彼女たちが小さなレジ袋をお尻に敷いているのを見て、オジサンは間髪を入れずに「もしよろしければ、一緒に座りませんか」とオファー。二人は美しい笑みを浮かべてお礼を述べた。
100円ショップで購入したビニールのピクニックシートは値千金。
二人はザグレブの大学生だった。まじかで見ると二人ともかなりの美人だ。オジサンが日本人と分かるとオジサンの隣に座っていた彼女は大喜び。
大学で日本語を勉強したらしい。日本語で「コンバンワ。私の名前はティナです。私の友達はマリンです」と自己紹介。
日本語を選択したのは日本のマンガ、アニメに興味があったから。日本語コースは学生に人気なので抽選で当たったとのこと。
『真夏の夜の夢』
女学生とチャラチャラおしゃべりしていると、あっという間に8時になりコンサート開始。バーンスタインのウエストサイド物語メドレーの軽快なテンポのオーケストラ演奏で始まった。
次にクロアチア民謡の歌手とバンドが登場。イタリアのカンツオーネのようなロマンチックな曲調だ。隣の女学生もウットリと浪漫情緒に浸っている。
前半が終わって休憩時間。彼女たちが持参したお菓子を頂きながらしばし歓談。それからマリンは用事があるのでと先に帰った。
コンサート後半は6人編成のマリアッチが登場。ラ・バンバなど聞いたことのあるノリのいい曲をメドレー。その後はオーケストラのバックでクロアチア民謡歌手とマリアッチの競演など盛沢山、数千人の大聴衆はノリノリ。
コンサートは大盛況のなか10時半にやっとフィナーレ。
クロアチアの地方都市の中国娘
6月23日夕刻、クロアチア西部のオシェックは人口10万人の小都市。クロアチアから陸路国境を越えてダニューブ川沿いにハンガリー平原を北上してブダペストまで行くにはオシェック経由が最短かつ風光明媚である。
夕暮れのオープンカフェで生ビールを二杯やってから庶民的食堂に入ったら、中国女子二人組に遭遇。こんな田舎町で中国娘が何をしているのか。
聞くと、中国政府から派遣されてオシェックで学生に中国語を教えているとのこと。すぐに彼女たちの背景が理解できた。
中国娘は中国共産党“対外文化侵略”の尖兵なのか
中国政府は15年くらい前から積極的に世界各地の大学、高校、専門学校などと提携して『孔子学院』『孔子課堂』を設立・運営している。
孔子学院・課堂というのは外国人に中国語を教育する中国語講座だ。中国共産党系機関が資金・教員・教材を提供しており、共産党の宣伝活動の一環と見られている。
欧米では中国のスパイ活動の一端を担っているとして警戒する動きもある。少なくとも中国語教育を通じて各国に中国シンパを増やす狙いは明らかだ。
現時点での孔子学院・課堂の総数は全世界で500を超えるとも言われている。孔子学院の公式ホームぺージによると特に中欧では多くの孔子学院・課堂が設立されている。田舎町のオシェックで二人に会ったことで中欧諸国への中国共産党の浸透戦略が広く深く進行していることを実感した。
ちなみにポーランドの中世の要塞都市トルンでも散策中に孔子課堂が運営されているカレッジを見かけた。