6月8日(土)~10日(月)。(承前)土曜日の深更に自転車をまんまと盗まれた。代わりの自転車を買って出発準備完了したのは月曜日の夕刻であった。
そんなわけで人口3万人の田舎町トレビッリョ(Treviglio)に4泊した。
田舎町の逞しき中国新移民
午前中から夜10時の閉店まで警察署の隣のカフェで時間潰しをすることが多かった。カフェは中国浙江省温州出身のアラフォー夫婦が切り盛りしていた。9年前に親戚を頼ってイタリアに出稼ぎに来て、7年前にこのカフェをイタリア人オーナーから引き継いだ。
筆者は過去6年の海外放浪で、世界各地でフツウの中国人の海外進出が加速度的に増加していることを目の当たりにしてきた。夫婦によるとイタリアでも50万人以上の中国人が移住して商売しているという。
中国人新移民は小さい元手でスモールビジネスを始めて次第に大きくしてゆく。このカフェもイタリア人オーナーから居抜きで借りて商売しているので初期投資はゼロだ。
中国人は休日も営業するので地元民には便利がられている。夫婦ともにカフェの仕事は経験がなくエスプレッソの淹れ方も開業前にオーナーから教わった。
驚いたことに田舎町トレビッリョにはカフェの夫婦、公園で知り合った床屋のほかに三家族の中国人が商売をしているという。
田舎町の人気バーテンダーは中国広東省出身女子
6月11日。午後から雲行きが怪しくなりロンバルディア平原の真ん中のレッツアート(Rezzato)という人口1万3000人の町に到着。
イタリア共和国公園という大袈裟なネーミングの公園の前に7~8軒の店が並ぶ新しいアーケード街があった。
風雨が激しく雷雨になった。アーケード街の出入口の通路は風雨を避けられ防犯カメラも設置されていたのでテントを設営。アーケード街にはピザ屋、花屋、ドラッグストア、パン屋、電気屋、そしてカフェバーがあった。
カフェバーはカウンターとテーブル併せて20席くらい。カウンターはほぼ満席。バーテンダーは20台後半のアジア系女子。聞くと中国広東省出身でイタリアに来て3年。
チャラチャラして客あしらいが上手く、バーは繁盛していた。地元のオジサンやジイサンたちのアイドル的存在なのだ。てきぱきと注文をこなしながら酔っ払いの相手をしている。やはり中国女性は逞しい。
29ユーロの罰金、痛恨の交通切符
6月13日。またも朝から猛暑。ベネチア方面へ向かってひた走る。途中工事のため複雑な迂回路へてトンネルを越えた。
自動車の交通量が多いので右端の側道を走っていたら、突然パトカーから停止命令。男女二人組の警官によると自動車専用道を自転車で走行するのは交通違反という。
「イタリアの高速道路(autostrada)は必ず標識が出ており、そもそも料金所がある。なにも無かったのでふつうのバイパス道路だろうと判断して走行していた」とオジサンは反論。
男性警官が本部と無線で延々と協議結果、「交通切符(ticket)を発行するので、規定の罰金29ユーロ40セント(≒3800円)を期日内に納付するべし」との無情の判決。
警官の片言の英語を要約すると「イタリアでは古くなった高速道路では通行料金徴収を止めるが、分類上は依然として自動車専用道路である。無料なので“AUSTRADA”の標識は掲示していない」
韓国やオーストラリアでも知らないうちに高速道路に迷い込んでしまったことがあったが、親切な警官からの“教育的指導”だけで、パトカーに先導されて一般道に下りたことを思い出した。
外国人移民への嫌悪感
6月17日。ベネチアから一日東へ走った。葡萄畑が続きワイナリーの看板をたびたび見かける。午後4時頃Calvecchiaという村に到着。
村の小さな公園でテントを設営していると、高校生が公園の前でチャラチャラお喋りしている。女子2人に男子4人。
情報収集のためお喋りに参加。片言のイタリア語で「日本人だ。自転車で旅行している。英語が話せるか」と声をかけると、女子が多少なら話せると即答。一番背の高い生意気そうな少年が「俺が一番英語は上手い」と虚勢を張って答えたが、発音も文法も怪しい。
少年によると「このあたりも最近は治安が悪くなった。アルバニア野郎とアフリカの黒い連中が増えたからだ。あいつらに気をつけろ。」と外国人移民労働者への敵意丸出しだ。他の少年も口々に「悪い連中だ」(Bad guys),「ヤバい奴らだ」(Dangerous people)と罵った。