田部康喜のTV読本

2020年7月18日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(azatvaleev/gettyimages)

 日本テレビ系「ハケンの品格」(毎週水曜午後10時)は、残業と不可能という文字が辞書にない、スーパー派遣の大前春子(篠原涼子)が13年ぶりに登場して、沈みゆく日本企業の問題点をえぐり出す傑作ドラマのシーズン2である。物語が描き出す企業社会から、アフター・コロナ時代の課題が見えてくる。

 老舗食品商社の「S&F」の営業企画課長である、里中賢介(小泉孝太郎)は派遣会社の「ハケンライフ」に要請して、13年前に会社の危機を救った春子(篠原)を再び職場に呼び寄せる。里中は会社が変わろうとしなければ、生き残れないと危機感を抱いている。春子の起用は、そのための布石になると考えた。

 第1回(6月17日)から第3回(7月1日)まで、春子は持っている、多彩な資格、例えばロシア語会話や調理師、カレーマイスターなどと過去の派遣経験を活かして次々に問題を解決していった。

 新入社員の井手裕太郎(杉野遥亮)が匿名で社内の様子を動画でSNSにアップロードした際に、社員食堂の名物カレーを作っている、アルバイトのコック・牟田吉男(六角精児)が冷凍庫に頭から入り込む様子を映り込んでしまった。食品商社としてはあるまじき「バイト・テロ」と受け止められて、取引先から取引の中止の連絡が殺到する。

 真相は、経費の削減のために牟田が解雇され、最後にキッチンや冷凍庫を掃除していたのだった。牟田がいなくなって、名物カレーの味はすっかり落ちて、春子がカレー作りに挑むことになった。春子は名物カレーを復活させ、S&Fに対する「バイト・テロ」の汚名も晴らした。

 シーズン1からシーズン2にかけての約10年の間に、日本の非正規雇用の比率は急速に高まった。2009年の33.7%から19年には38.3%。15歳から24歳の層でみると、45.0%から50.9%である。

 新型コロナウイルスによって、テレワークなどが企業に導入されるなかで、日本のサラリーパーソンの働き方の問題点が改めて浮き彫りになっている。OECD加盟国の時間当たりの労働生産性(2018年)において、日本は36カ国中21位である。米国の人事コンサルティング会社の調査によると、従業員の企業に対するエンゲージメントつまり「組織の成功に貢献しようとするモチベーションの高さと組織の目標達成のために自分が努力しようとする意思の強さ」は、日本は28カ国中圧倒的な最下位の38%だった。トップのインド77%、続いてデンマーク67%、メキシコ63%、5位の米国が59%、中国57%。英国、ドイツ、フランスなどの欧州先進国も40%前後だった。日本のサラリーパーソンは、企業のなかで幸福ではない。

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