2024年11月23日(土)

田部康喜のTV読本

2020年7月18日

春子が見せる日本企業の〝変革〟

 第4話(7月8日)に至って、春子の前にいよいよ、企業の組織の壁が立ちはだかる。春子が働いている、営業企画課などを束ねる営業事業部長の宇野一平(塚地武雄)は、新人教育に飲みニケーション(飲み会)を重視して、自分の営業マン時代の苦労と自慢話を繰り返す。新入社員の井手(杉野)に対して、春子が稟議書の判の押し方や資料のホッチキスの止め方などを指導するのを見て、「新人の指導は社員の仕事だ。派遣が口出しをするな」と怒る。しかし、社員たちは潮が引くように宇野の周辺からいなくなって、結局は最低限の指導を春子に業務命令する。

 井手は新人として初の営業に向かう前日に、サンプルのおでんセットを地下の冷蔵倉庫から準備するように、派遣の福岡亜紀(古谷彩子)と千葉小夏(山本舞香)に指示した。井手があらかじめサンプルから除いておくように指示されたにもかかわらず分別しておかなかったので、社内ルールに沿わない食品表示がある分をふたりの派遣は正規のものと混ぜてしまった。部内は早急に回収を図ろうと騒然となる。この騒ぎのなかで、井手は姿をくらます。

 春子は、地下の冷蔵倉庫内で井手を見つける。彼は、サンプルを正規のモノと回収しなければならない分とを仕分けしていた。自分がやらなければならなかった仕事をしなかったばかりに、派遣のふたりが責任を問われたのを悔いた。

 雷による一時的な停電によって、冷蔵倉庫の扉のセキュリティが誤作動をするようになって、春子と井手は閉じ込められる。こごえるような空気のなかで、井手は着ていたジャンパーを春子に着せかける。

 井手は春子に退社したいという。「会社に縛られたくない。仕事とプライバシーを区別したい。自分のスキルを活かしたい。広い世界に羽ばたきたい」と。「大前さんの生きざまって、僕と似てますね」と井手はいう。「ふざけないでください。派遣は休んだら食べていけません。甘やかされた社員とは違います。こんなところにいて、私のお時給は高いんです」と春子は言い切る。春子が扉を掃除用のモップの柄で規則的に叩いた結果、守衛が気づいて、ふたりは脱出できた。

 職場に戻って、井手は春子のもとに頭を下げたうえで「僕はスーパー派遣を目指します」という。春子は「無理です。正社員として使い物にならないヘタレは派遣にはなれません。多少は見込みがあるヘタレかと」。

  
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