コロナによるテレワークの急拡大は、多くの企業に働き方を見つめ直す機会を与えた。それで影響を受けるのがオフィスの在り方だ。日本総合研究所の室元翔太研究員は、「テレワークが定着することでオフィス需要が大幅に低下する」と指摘する。
すでに動きが出始めている。3月に全社員へのテレワーク制度を導入した大和証券は、「事態が収束しても出社率を100%には戻さないつもりで、50~70%程度で業務が効率的に行えるのであれば、本社フロアの削減は検討しうる。全国の営業店の不動産コスト削減余地も大きい」とし、オフィス面積削減の検討を進めている。
しかし、オフィスは定期賃貸借を行っている企業が多く、すぐに手放せるものではない。そこで、空きスペースのシェアリングサービスを行うスペースマーケット(新宿区)は4月末、オフィスの一部を貸したい企業と借りたい企業のマッチングを行う「オフィス間借り」支援サービスを開始した。
ビジネス開発部の堀田遼人氏は、「オフィスを改築したサンクコストを考えて、オフィスを手放すことをためらう企業からの引き合いが多い」と話す。同サービス開始後1カ月で、すでに50件近くの問い合わせが来ており、中には都心で数百坪ものオフィススペースを貸し出したいという依頼もあるという。
本社オフィスの面積を減らす動きがある中、テレワークで使用するサテライトオフィスの利用にも変化が生まれている。
首都圏を中心とする約100拠点でサテライトオフィスサービスを展開するザイマックス(東京都港区)によると、コロナ前は、郊外より都心部での利用率が高かったが、現在は、郊外での利用率の方が高くなったという。ザイマックス不動産総合研究所社長の中山善夫氏は、「もともとのサテライトオフィスの利用は顧客の多い都心部での営業職などのニーズに応えたものだったが、事務的な職種への利用も広がっており、顧客に近い都心部である必要がないため、自宅に近い郊外に拠点が分散していく可能性がある」と分析する。
一方、オフィスの分散化は必ずしも正の効果だけではない。経済産業研究所所長の森川正之氏は、「他の人の生産性が上がると自分も上がるという生産性の外部効果が働く。逆もしかりで、オンライン会議などで誰か一人の通信速度が遅いと他の人の生産性にも影響する。企業は自宅やサテライトオフィスのIT環境に対して、働き手によってできるだけ差がないように投資するべきだ」と指摘する。
実際こうした点を懸念する企業も多く、オフィス家具大手のオカムラ・ワークデザイン研究所には、「リアルとリモートのハイブリッドな働き方で効率的に業務を進めるには、どのようなオフィス環境を整備すればいいかという相談が増えている」と研究員の池田晃一氏は語る。
もはや都心に広いスペースを用意し、OA機器を揃えるだけでは生産性が高まるオフィス環境とは言えない時代になっている。
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