新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業が在宅勤務などのテレワークを半ば強制的に行うことになった。パーソル総合研究所の調査によれば、正社員のテレワーク利用率は、3月中旬に13.2%だったが、緊急事態宣言発令後の4月中旬には27.9%と約2倍に増加、東京都に限れば49.1%に達した。このうち、所属する会社で初めてテレワークを実施した人は約7割に上った。
ある食品商社の事務職社員は、「在宅勤務者が一気に増えたことで社内システムにアクセスが集中して動きが遅く、業務効率が悪くなった。また、商品の卸先にはFAXでやりとりするところもあり、発注内容を確認するために定期的な出社が求められた」と話す。また、ある生命保険会社の営業職社員は、「顧客のところへ直接訪問することが原則禁止になったため、2~5月の4カ月間は新規の契約がゼロだった。5月中旬にテレビ会議システムが導入されたが、初めての試みで顧客対応どころかシステムの使い方にまだ慣れていない」と不安気に語った。
コロナ禍で知見を蓄積
コロナ後を見据える企業
急なテレワークへの移行で困惑する企業がある一方、コロナ後を見据えて働き方改革を加速させようとしている企業もある。
三井住友海上火災保険は、コロナの感染が拡大し始めた2月末から社内会議をオンラインに移行し、緊急事態宣言後は特定警戒地域における出社人数を通常の3割に抑えた。宣言解除後も、オンラインの方が生産性が高い業務は継続実施しており、出社人数は多くても7割に抑えている。
人事部企画チーム課長の荒木裕也氏は、「これまでリモートツールを使わなかった役員や役職者から『やってみると以外に普通に会議ができるじゃないか』という前向きな声が多く出ている。会社全体のITリテラシーも上がったことが非常に大きい」と語る。
代理店や得意先企業とのやりとりにおいても、コロナの感染拡大後はTeamsやZoomなど、相手が使用可能なオンライン会議システムに応じる形で対応し、6月に入ってもオンライン対応を継続している。また代理店に対しては、コロナ前から導入している、保険商品に関する質問に自動で回答するチャットボットサービスに加え、2月には代理店の行動解析に基づく指導機能を備えたAI搭載ソフトを導入するなどして、これまで代理店とのリアルなやりとりを要していた業務の効率化を進めている。