2024年12月19日(木)

中国 覇権への躓き

2020年7月22日

 対照的に、中国の新型コロナへの対応は、国際社会、特に先進民主主義諸国の対中評価を損なったと言わざるを得ない。情報公開に対する消極姿勢、世界保健機関(WHO)との関係、自国を正当化するための対外宣伝などがその理由であろう。また、周辺地域での挑発的な行動も、関係諸国の警戒を招いている。そして、香港国家安全法の立法は、中国と先進民主主義諸国の溝を決定的にした。

 台湾については、中国の主張する「一つの中国」原則により、台湾がWHOから排除されていることが争点化した。5月のWHO年次総会(WHA)に際して、アメリカ、日本、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドが台湾の参加をWHOへ要請し、総会での「継続審議」に持ち込んだ。

 このように、台湾はWHAに参加できなかったものの、先進民主主義諸国から明示的な支持を得た。こうした経緯から生まれた自信も、蔡英文政権の香港に対する支援表明を後押ししているように見える。

 自信を得た台湾に対し、中国は「感染症に乗じて独立を謀っている」と批判し、軍事的牽制を中心とする圧力を強化している。中国軍機による台湾周辺空域での訓練は2月以降活発化し、3月中旬以降は台湾東部の海域に海軍艦が見られるようになった。これに対し、米軍も偵察機などが台湾周辺を飛行する頻度を増やしており、台湾海峡における緊張は高まっている。

 中国と米台間の緊張が高まるなか、台湾が香港の民主運動家を受け入れれば、新たな火種となることも考えられる。あるいは、中国の香港国家安全法の運用において、台湾市民が座視できないことが起きれば、蔡英文政権はより明確な香港支援や対中批判を求められる可能性もある。このように、香港で起きていることは、既に中台関係を構成する重要な1ピースとなっている。

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◆Wedge2020年8月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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