2024年4月20日(土)

子どもは変わる 大人も変わる 【WEB特別版】

2012年7月9日

生きるエネルギーを発散させてあげる

 また、私の人生で唯一の小学校1年生の担任の経験は、まさに「遊び」の大切さ、「押さえつけても生きる力は育たない」ということを教えてくれました。彼らの一向に止まないイタズラにどう対処すべきか悩んでいた私は、ある時「彼らは生きるエネルギーがあり余っているのだ。だからそれを発散させてあげればいいのだ」と気付きました。

 子ども館同様、様々な遊びを通じて日々蓄えられるエネルギーを発散することで、楽しさを発見し、心を充実させていったのでしょう。そうして磨かれた内面は、学習面でも輝きを放ったことを、私は今でも忘れません。(詳細は『こうして彼らは不登校から翔びたった 子どもを包む、3つの言葉』116ページ参照)

「子どもが子どもである時間」を
奪ってしまった大人たち

 戦後のわが国は、何もかも失った戦争から立ち直ることをベースに生きてきました。しかし、やがては高度経済成長を目指してひた走ることになります。それは子どもたちにも波及して、彼らの大事な遊び場であった原っぱや道路などを、大人たちの都合で排除していきました。そればかりか、「習いごとだ」「塾だ」と尻を叩いて、「子どもが子どもである時間」を奪ってしまったのです。

 「それが子どもたちの幸せにつながる」と妄信してきたツケが、今、子どもたちのさまざまな否定的な状況の遠因であることを疑うことはできないでしょう。

 臨床心理士の河合隼雄さんは、「大人たち(特に教育者と言われる人たち)は、指導したり、言い聞かせたりすることが好き過ぎる。自由な遊びのなかに、子どもたちの創造活動が現れ、自ら育ってゆくのである。遊びによって子ども時代に養われるイマジネーションのはたらきは、成人してからも創造活動をするときに、そのベースとなっている。『お勉強』で固められ、遊びの少ない人間は、成人してから創造的な仕事を達成できないのである」と言っています。

 更に、子どもたちへの遊戯療法の視点から「治療はあくまでも子どもの宇宙への畏敬の念を基礎にして行なわれる。畏敬すべきこれほどの存在に対して『教育者』『指導者』と自認する人たちが、それを圧殺することにどれだけ加担しているのか、そのことを知っていただきたいのである。魂の殺害は、制度や法律によって防ぐことは不可能である」とも言っています。


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