学校に行けない子どもたちの居場所・学びの場として、フリースクール「夢街道・国際交流子ども館」を開設してから10年が過ぎました。今までの子どもたちは、地元の京都府、私が学校に勤務していた関係で隣の奈良県、そして大阪からもやってくる中学生・高校生がほとんどでしたが、この春からは一気に小学生が4人も入ってきて、様相が一変しました。
どの子も学習しようなどという殊勝な気配は微塵もなく、頭の中、否、身体全体を支配しているのはひたすら「遊ぶ」ことです。子ども館の押し入れ、三階のロフトなどいたる所に秘密基地を作って遊んでいます。そうかと思えば、散歩、サイクリング、様々な種類の運動など、疲れを知らぬ子どもたちの動きにタフなスタッフたちもいささか閉口気味です。
子どもは遊びの天才
「勉強をサボって遊んでばかりいる」と思う人も少なくないかもしれません。しかし、彼らは真っ当で、健康なのです。引きこもっていた頃、遊ぶことすらしていなかったのですから。そんな彼らが、なぜ子ども館で遊べるようになったのでしょう。それは、「人間本来の姿」に戻ったからだと思うのです。
遠い昔、彼らの年齢の頃、私にとって学校とは友だちと遊ぶ場所でした。馬とび、押しくら饅頭、Sケン(ケンケン合戦)……。先生や親には秘密の場所でのベッタン(メンコ)、ベーゴマ、ビー玉、泥棒と警察ごっこなど、大人たちに何と言われようと子ども同士の秘密を守り合ったものです。学校での勉強は、授業の時間が過ぎればそれで「終わり」でした。
(提供:記事内すべて子ども館)
このように、もともと子どもは集まれば自然と遊ぶものです。子どもは遊びの天才と言っても過言ではありません。ですから、子ども館にやってきた子どもたちは、人間らしい生活を送ることで、子ども本来の姿に戻っていき、のびのびと遊べるようになったのだと思います。たとえば、大好きなスポーツを封印して学業に励み、有名私立中学に合格したK。入学後、ハイスピードで進む授業にKの心身がSOSを発したのでしょう。学校生活に終止符を打ち、子ども館にやってきました。
子ども館では、サッカーやソフトボール、川遊び、キャンプなど例を挙げれば切りがないほどたくさんの遊びを楽しみました。Kはまるで喉の渇きを潤すかのように、本来の自分を取り戻していき、表情が豊かになっていったのです。