「先生、俺たちは何で9教科も勉強せなあかんのや!」
かつて、奈良の東大寺近くの中学校に勤務していた時、ある生徒が授業中、私にこんなことを問うてきたことがありました。
私は逆に、こう聞き返しました。
「ほな、君らに聞くけど、朝8時半になって奈良公園の鹿は何で学校に行かへんのや」
こんな禅問答のやりとりをしながら、私は最後に「君たちは“人間らしい人間”になるために学校に通っているんだよ。250万年と言われる人類の誕生以来、人間が生き抜いてきた歴史の中で、生きていくために必要なことを、9教科に分けて学んでいるんだよ」と言うと、生徒たちは、「フゥーン」という表情で矛を納めてくれました。
生きるために「学ぶ」
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だと言われています。
火を恐れていた人類は、木と木の摩擦が火を起こすことを学び、それを利用することを覚えてきたのです。そして、動物の肉を焼いて食べることを発見し、脳を発達・進化させてきました。
人類はこのように、先人たちの生活を知り、知恵を受け継ぎながら、人類が延びるための術を、「学ぶ」ことを通じて会得してきたのだと言っても過言ではありません。
子ども館設立の想い
私は10年前、京都府木津川市で、小・中・高校の不登校の子供たちの居場所・学びの場として、「夢街道・国際交流子ども館」という、フリースクールを開設しました。
定年前に3年間、校長として勤めていた中学校は、偏差値が奈良県下で常にトップグループの学校でした。しかし、学校の体制に不満を持つ子どもや家庭に居場所のない子どもたちの一部は校内暴力でストレスを表示していました。その一方で不登校の子どもたちを一人も学校に復帰させることができませんでした。その無念の思いから、退職金をすべてつぎ込み、子ども館を開きました。
私は日々、ここで子どもたちの成長を見守っていますが、4年前にやってきたAが先日、こんなことを言ってきたのです。
「大学で心理学を学びたい」