2024年11月22日(金)

人事部必見! 御社の研修ここが足りない

2012年7月18日

 社員60人と家族も含めた総勢100人が参加。講義の後はパーク体験と称して園内で遊び、ホテルでの懇親会も催した。固いだけの研修ではなく、楽しみながらもホスピタリティを体で学び、社員間の交流も図った。研修文化を急に根付かせようとしても無理が生じるだけ。それよりも率先して参加したくなる形を作ってあげることが、実があるという判断だ。福利厚生ではない。

EQを座学で終わらせない仕掛け

 同時に開始したのが全社員を対象にしたEQ(Emotional Intelligence Quotient=感情指数)テスト。EQは、感情をうまく管理し利用する能力であり、250項目の設問に回答することで、行動パターンや周囲へのコミュニケーションの傾向性を把握することができる。実施にあたってはアドバンテッジリスクマネジメント(ARM)のシステムを利用した。

 マスコミを含め出版界で働く人が陥りやすいのが自己満足の世界。言い換えれば自分流の横行であり、プライドと表現できるかもしれない。そこにEQを導入して自分では気が付かない自身の言動パターンを認知させ、気づかせること。そこから自己啓発を促していく。それが社内を活性化させ、社員のやる気を引き出せると考えたという。

 次に仕組んだのが、EQを座学で終わらせないこと。その仕掛けは「EQナイト」と称する発表会兼食事会だ。各部署に置いた次世代リーダーが声をかけ、EQテスト結果を持ち寄る。ただ集まるだけでは面倒だが、会社が1人5,000円までを負担する形で自由に飲み会をしてもらう形にすれば敷居は低く、参加しやすい。「会社が社員の飲み会を側面支援する形ですが、そうではなくリラックスしてEQ結果を各自が自覚できるようにしただけです」と宇井部長。テスト結果を肴にすることで深刻ではなく、スムーズに自身の気づきに結びついていった。

社内活性化につながった次世代リーダーの育成

長時間の議論の末決定した「富士見SPIRITS」(提供:富士見書房)

 契約社員を含め70人程度で業務に取り組む少数精鋭の富士見書房にとって、やる気のひとつにあげられるのはプロパー社員のモチベーションを高めること。そのためには、角川書店からではなく生え抜き社員からの幹部登用は不可欠だ。そこでスタートさせたのが、次世代リーダーたちの研修。10人を選抜し合宿して会社を永続させるために必要なことを語り合い、会社の行動規範となる「富士見SPIRITS」を制定させた。

 それは長時間の議論の末に出てきた。「すべきこと」として(1)楽しく、元気にあいさつ(2)時間と約束を守る(3)ほめる、叱る、育てる――。「してはいけないこと」として(1)確認を怠るな(2)同じ失敗をするな(3)一人で悩むな――であった。「シンプルですが、人に興味をもつことが表現されています。ここがターニングポイントになりました」と荒木リーダー。


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