各部署のリーダーの下に次世代リーダーを置き、彼ら自身が会社に対する目的意識の明確化とやるべきことを理解し、それぞれの部署に必要なことを学ぶ。この意識変革が部署ごとに変革をもたらし、全社に波及する。さらにEQによる自己分析を通して、自分に欠けている面を補う行動のなかに他人を思いやる気持ちが生まれる。すべてが相乗効果となって業績にも反映されていく。社員が抵抗感を持たずに参加できたのは管理部のちょっとした仕掛けにあったわけだ。
こうして富士見書房は角川書店グループの中でトップクラスの業績を出せるまでに復活した。前期はさすがに景気低迷の波に押され増収減益となったが、跳ね返す力は以前とは違う。電子書籍や権利ビジネスなど新たな収益要因も加わり、潜在力のある出版社という印象を受ける。
快適なオフィス環境を兄弟会社で分け合う
付け加えるとオフィス環境の改善もある。昨年9月に本社オフィスを東京・九段から現在の角川本社に隣接するビルへ移転した。同時に同規模の角川学芸出版も同じビルに移転。扱う書籍の種類は真逆だが、兄弟会社として一つのビルを共有することにした。ビルのフロアで会社を分けるのではなく、フロアごとに右は富士見書房、左は角川学芸出版という形。管理、経理はドアで仕切るが編集、営業などの部署に仕切りは設けていない。
社長が両社を兼務していることもあり、編集フロアの真ん中に社長のオフィスがあり、両社を見渡せる形になっているのはユニークだ。会議室、応接室、休憩室なども拘りをもって作られており、原則として食事は席ではなく、休憩室などでとるようにしているという。「自席で食事をすると、一人でこもりがちになりますから。場を提供するのでそこで食べてもらう」と宇井部長はいう。コミュニケーションの場を少しでも増やすのが狙いだ。
(提供:富士見書房)