2024年4月21日(日)

DXの正体

2020年9月30日

ヒルトップ社の試作ルーム。ここでは、他社の人材も混じって課題解決に向けて試行錯誤を行う。写真左、山本氏、右、筆者

 では、現在どのような製品の開発に取り組んでいるのか?

 「一つ目は、錠剤の外観検査機です。1時間で10~12万錠の検査能力があります。量だけでいうとすごく多いというわけではありませんが、小スペースで多品種小ロットに最適です。対象とするのは、ジェネリック、サプリメントです。

 次にPCR検査機です。検知方法が従来のものとは全く異なります。通常、検査するのに5時間程かかります。一方、我々の開発した検査機ですと、通常よりも少ない検体を短時間で検査することができます。実は、上市したのが、コロナ前の昨年で、意図せざる形でしたが、時機を得た製品となりました。

 そのほかにも、全く針を使わない注射器の開発も進めています。従来とは異なる方法で体の中に薬を投入していきます。筋力皮膜に入るので、初期の拡散力が高いという特徴があります。

 日本の企業は『こうじゃないとダメ』という意識が強すぎると思います。例えば、得意分野の仕事をしていれば、それなりの結果は得られます。けれど、それ以上の結果も、楽しさも得ることはできません。HILLTOPでは、あえてストライクゾーンを決めず『面白そう』なら仕事を選択せずとりあえず手を出そうとします。そうすることで、装置開発、医療機器、宇宙といった先端産業で成果を挙げることができました。

 弊社では、機械製造部の約7割が文系です。製造=理系という思い込みが生じがちですが、実際そうは思いません。数字は理系の方が強いかもしれないが、文系は色んな人がいるので、新たな気づきを得られることが少なくありません。こうして会社のイノベーションに繋げています」

〝未来の世界から来た〟モノづくり企業

 HILLTOPは、まさに〝未来の世界から来た〟モノづくり企業と言えるだろう。40年も前から、現在のDX時代の到来を先取りするかのように、油臭い工作機械に囲まれながら日々の生産に追われるモノづくりの概念を覆し、匠の技をデジタル化し、システムの中で形式知化させ共有化している。

 作業する人たちは普段着でコンピュータに向かって作業し、夕方セットボタンを押して帰宅すれば、夜間に機械が働き、朝には製品ができている。つまり、HILLTOPでは、機械、人、データが完全につながり、機械、人、データがその機能を最大に発揮するように“デジタル化(DX)”されているのだ。

 そこには、日本企業がグローバルに勝ち抜くために目指すメーカー像のヒントがある。

  
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