アフガン、イラクからの軍撤退も
トランプ政権が11月3日の選挙に間に合わせるようにアピールしようとしているのは外交だけではない。紛争地からの米軍撤退もそうだ。大統領は元々、公約としてアフガニスタンやイラクなどからの米軍撤退を掲げてきており、ホワイトハウス報道官は「トランプ氏は野党民主党の歴代大統領とは違い、有言実行の大統領」と強調している。
焦点の1つが9・11をきっかけに始まり、19年という最長の戦争になっているアフガニスタンからの撤退だ。米国は2月、アフガンの反政府勢力タリバンと和平合意に調印。1万2千人の駐留軍を14カ月かけて段階的に撤退させることになった。米中央軍のマッケンジー司令官によると、11月までに米軍を4500人に削減する見通しだという。
こうした撤退日程に合わせるかのように、アフガニスタン政府とタリバンとの和平協議が12日、カタールのドーハで開始される予定だ。協議にはポンペオ米国務長官も駆けつけ、両者を側面支援するが、「米国の最大の目的はトランプ大統領が公約を誇示できるよう撤退をスムーズに進めることだ。難航が予想される和平協議は二の次だろう」(同筋)。
この指摘のように、和平協議の行方は厳しい。アフガン政府とタリバンがどのような国家体制を作り、権力の共有を図っていくか、民主主義制度の維持とタリバンが要求するイスラム教の厳格な適用との整合性をどうするのかなどをめぐって、当初からつまずく可能性が高い。
しかも、アフガンの治安が改善する兆候はない。米軍の撤退が始まったこの5カ月間で、政府軍兵士3500人が死亡、民間人約800人が犠牲になった。最近では第一副大統領の暗殺未遂事件も起きた。治安の悪化がすべてタリバンとの戦闘激化のせいとは言えないものの、和平協議が暗礁に乗り上げれば、政情不安はさらに高まることになるだろう。
イラクからの米軍撤退も進んでいる。マッケンジー司令官によると、5000人を超えていた駐留軍を今月中に約3000人にまで削減する見通しだ。国防総省内部には、急激な撤退により、イランのイラクへの影響力が強まり、過激派組織「イスラム国」(IS)も復活するという懸念が出ている。