中東を読み解く

2020年9月13日

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 トランプ大統領は9月11日、イスラエルと中東の小国バーレーンが国交正常化で合意した、との共同声明を発表した。イスラエルとペルシャ湾岸諸国の国交正常化はアラブ首長国連邦(UAE)に続いて2カ国目。再選に苦戦する大統領が外交的成果を誇示し、有権者にアピールするのが狙いだ。だが、強引な選挙目当てのパフォーマンスに「外交の私物化」(アナリスト)との批判も強い。

国交回復に抗議するパレスチナの人々( REUTERS/AFLO)

シナリオを描いたのは娘婿

 ベイルートの消息筋や米メディアなどによると、今回もシナリオを書いたのはトランプ氏の娘婿で、ホワイトハウスのクシュナー上級顧問だ。同氏はトランプ氏を再選させる一助として、サウジアラビアの支配者ムハンマド・サルマン皇太子、UAEアブダビのムハンマド皇太子らと組んで今年1月、イスラエル寄りの中東和平案をまとめ上げた。

 和平案はイスラエルとパレスチナ自治政府の和平交渉の枠組みを示す一方で、2つの裏のシナリオを含んでいた。1つはトランプ政権の仲介により、イスラエルと敵対してきたアラブ諸国との国交樹立を順次進める戦略だ。その目的はパレスチナ人をアラブ諸国から引き離して孤立させるというものだった。

 「イスラエルを占領地のヨルダン川西岸から撤退させる、といった非現実的な要求を断念させ、米国の和平案を呑ませるのがクシュナーの思惑だ。要はパレスチナ人に対し、現実を直視し、“もっと大人になれ”と突き付けたわけだ」(同筋)。もう1つの狙いは米国とイスラエル、サウジアラビアが敵視するイランへの包囲網を強化することだった。

 UAEに続きバーレーンがイスラエルとの国交樹立に踏み切ったのはこうしたシナリオに沿った動きであり、両国の後ろ盾であるサウジアラビアが承認した決定であることに他ならないだろう。トランプ大統領は発表の際、「今日は歴史的な日だ」と米中枢同時テロ(9・11)から19年目当たる日であることを指摘。中東の紛争に終止符を打つ意味で、イスラエルとの関係正常化に他のアラブ諸国も追随するよう期待感を示した。

 トランプ政権は15日にホワイトハウスでイスラエルとUAEの関係正常化合意に署名する調印式を開く予定にしているが、バーレーンも新たに式典に合流することになった。式典には、トランプ大統領の他、イスラエルのネタニヤフ首相やUAEのアブドラ外相らが出席、大統領が大々的にその成果を宣伝する見通しだ。サウジのムハンマド・サルマン皇太子もサプライズとして式典に出席することが検討されていたが、事前にその情報が漏洩し、急きょ、中止したと一部で報じられている。

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