イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)による関係正常化合意の背景にはやはり、大きな秘密取引が隠されていたようだ。イスラエルのメディア報道などによると、仲介したトランプ米政権は合意に踏み切ったUAEに対する報奨として、最新のステルス戦闘機F35と攻撃型ドローンの売却交渉を進めていることが明らかになった。敵対国イランを刺激するのは確実だ。
関係正常化の“裏取引”
ヘブライ語紙イディオト・アハロノト(8月18日付)の報道として伝えられるところによると、トランプ政権はUAEがイスラエルと国交を結ぶことで合意した一環として、F35戦闘機と攻撃型ドローンを売却することに秘密裏に同意したという。
この報道を受けたニューヨーク・タイムズも19日、トランプ政権が両兵器のUAEへの売却交渉を加速している、と報じた。ドローンは「プレデター(捕食者)」と「リーパー(死神)」と見られる。UAEはこの6年間、F35とともに、2つのドローンの売却を米国に求めてきた。
米国によるUAEへの最新兵器売却が最終的に決定されたものであるかは不明だが、UAEとイスラエルの関係正常化の“裏取引”であった可能性が高い。UAEはペルシャ湾対岸のイランの軍事行動を抑止するため、F35を必要としており、またトランプ政権にとっては、UAEに軍事力を増強することでイラン包囲網の先兵としての役割を担わせ、同時に巨額の兵器売却により多大な利益を得ることができるという思惑もある。
しかし、イスラエルには“痛し痒し”だ。建国以来、アラブ諸国と敵対してきたイスラエルにとって、国交を正常化したからと言ってUAEに全幅の信頼を置くことは難しい。アブダビ首長国のムハンマド皇太子が現在、UAEを牛耳っているものの、体制が変われば、イスラエルとの関係がどうなるのか分からない。米国製の最新兵器の矛先が自分たちに向かってくる懸念を払拭できないというわけだ。
イディオト・アハロノトの報道直後、ネタニヤフ首相は声明で、UAEへの武器売却に反対する考えをトランプ政権に再三伝えてきたことを公表、UAEとの関係改善を推進する一方で、兵器売却には反対するというイスラエルの微妙な立場が浮き彫りになった。1973年の第4次中東戦争以来、米国には、アラブ諸国に対してイスラエルの兵器の優位性を維持するという方針がある。
ニューヨーク・タイムズによると、UAEへの兵器売却計画の中心人物はトランプ大統領の娘婿で、ホワイトハウス上級顧問のジャレッド・クシュナー氏。現場で秘密交渉に当たってきたのが国家安全保障会議(NSC)中東担当のミゲル・コレア少将だ。同少将は駐UAE大使館付の武官として、UAE側と接触してきたが、大使館の代理大使と衝突し、帰国した。