2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2020年8月25日

イランの報復も

 当面の焦点は米国とイスラエルを敵視するイランが、対岸のUAEが「敵側に回った」(ベイルート筋)ことで、どう反応するかだ。すでにUAEの警備艇がイラン漁船に発砲する事件も起こっており、ペルシャ湾の軍事的な緊張が高まるのは避けられない。石油輸入の9割を同湾岸に依存する日本にとっても他人ごとではない。

 しかもイランは23日、同国の核開発の中心である中部ナタンズの核関連施設で7月に発生した火災が「破壊工作」だった、と発表した。イラン側は誰が破壊工作を実行したのかには言及していないが、危険を冒してイランの奥深くでこうした秘密作戦を実行できるのはイスラエルの情報機関モサド以外に考えられない、というのが一般的な見方だ。

 この火災では、ウランの濃縮を行っていた遠心分離機多数が壊滅的な打撃を受けたとされている。イランでは6月下旬以降、ナタンズの施設の他、ミサイル関連施設や発電所、石油関連工場などで爆発や火災が相次いで発生、モサドによる破壊工作の可能性が指摘されてきた。

 「注視しなければならないのは、破壊工作と断定したイラン側がどのような報復行動に出るかだ。イスラエルやペルシャ湾上の米艦船、湾岸の米軍基地は既に厳戒態勢を敷いているが、UAEも報復対象になる恐れがある」(同)。新秩序の出現は新たな対立のリスクをはらんだものと言えそうだ。

  
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