2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2020年9月13日

逆転狙いウルトラCも?

 トランプ大統領がなりふり構わずに外交や軍撤退で成果を挙げようとしているのは、選挙情勢が党大会を経てもなお劣勢のままだからだ。各種の世論調査をまとめている「リアル・クリア・ポリティックス」によると、11日現在、トランプ氏は対立候補である民主党のバイデン前副大統領に平均で7.5ポイントほど後れを取っている。

 一部調査では、中西部インディアナ、南部ノースカロライナ、テキサスなど、バイデン氏を上回った州もあるが、世論調査上、支持率が劇的に好転したという状況ではない。むしろここに来て、失点が目立つ。大統領は第1次世界大戦の戦死者を“負け犬”呼んでいたことや、新型コロナウイルスの危険性を意図的に隠したりしていたことが相次いで暴露され、釈明に追われた。

 コロナウイルスの危険性を隠した疑惑はワシントン・ポストの著名な記者ボブ・ウッドワード氏の新著「RAGE(怒り)」の中で明らかにされているもので、国民の間にパニックを起こしたくないとの理由から、「ウイルスがインフルエンザよりもっと致命的」であることを知りながら国民に知らせなかった、との批判を受けている。

 ウイルスの危険性が明白なれば、「再選戦略の要である好調な経済が悪化し、株価の暴落を招く」という恐れから、大統領が国民にウソをついたのではないかとの指摘は合理性がある。トランプ氏が真実を早期に話していれば、感染がこれほど拡大しなかった可能性もあり、バイデン氏は「ほとんど犯罪だ」と厳しく非難している。

 トランプ氏の再選戦略は失敗したコロナウイルス対応にはできるだけ触れず、黒人差別撤廃運動の抗議デモによる混乱を強調、社会不安を煽って郊外の白人の支持を拡大することが基本だ。治安悪化を食い止めることができるのは「犯罪に弱腰」のバイデン氏ではなく、「法と秩序」の維持を掲げるトランプ氏だというわけだ。

 だが、「法と秩序」を主張するだけでは勝算は立たず、外交の成果を大々的に訴えて有権者の取り込みに必死になっているというのが現実だろう。トランプ氏は今後、29日に1回目が行われるバイデン氏とのディベート(討論会)計3回で圧倒し、逆転勝利につなげたい思惑だ。

 加えて、「大統領はウルトラCの隠し玉を持っているかもしれない」(アナリスト)という声は日増しに強まっている。いわゆる“オクトーバー・サプライズ”だが、それが3回の首脳会談の末に失敗した北朝鮮との「何らかの合意」である可能性も否定できない。

  
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