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実際、ここ数か月、主要国・地域の利下げが相次いでいる(図表2)。7月だけをとっても、5日に欧州中央銀行(ECB)とデンマーク、6日に中国、11日にはブラジル、12日には韓国、といった具合だ。
しかも、金利水準は際立って低くなっている。主要国・地域では、欧州中央銀行、デンマーク、ブラジルが過去最低金利だ。イギリスの政策金利(レポ金利)も2009年3月5日以来0.5%に引き下げられているが、これは1694年イギリスに中央銀行(イングランド銀行)が創設されて以来の最低金利とされる。
過去最低金利水準となっているのは政策金利だけではない。長期金利も同じで、アメリカの10年国債利回りは7月24日に一時1.39%をつけ、最低金利を更新した。これは、過去200年での最低金利とも見られている。ドイツの10年物国債利回りも、7月23日に、6月につけた1871年のドイツ帝国の成立以来の低水準といわれる1.13%を割り込んだ。また、同日には英国債10年物利回りも、一時1.77%台となって過去最低を更新した。23日以降、日本でも10年物国債利回りは0.75%を割り込み、9年ぶりの低水準となっている。
限定される金融政策の余地
先進国、新興国の別を問わず、金利水準が大きく低下している背景はいくつもある。冒頭に述べた、欧州債務危機の深刻化にともなって市場での不安が高まり、資金が安全資産に逃避する動きが強まっていることはそのひとつだ。
また、世界経済の減速もある。欧州は深刻な債務危機の中で財政再建を続けざるを得ず、欧州委員会では2012年のユーロ圏成長率をマイナス(▲0.3%)と見込んでいる。
アメリカの景気も鈍化している。企業業況感を示すISM指数を見ても、製造業では6月に好不況の分岐点とされる50を2009年7月以来初めて下回った。さらに、新興国では中国経済も減速感が強まっており、7月13日に発表された4-6月期実質GDP成長率は7.6%(前年同期比)と、3年ぶりに8%を下回った。
理由はいくつも挙げられるが、主要国での際立った低金利が示すことは深刻だ。リーマンショック後、主要国は景気悪化を財政金融政策で支え、財政悪化が厳しくなった現在では、金融政策が大きな役割を果たしている。
しかし、金利がここまで低くなると、金融政策余地はおのずと限られてくる。このままでは、アメリカに次いで他の主要欧州諸国や欧州中央銀行も金利操作による金融政策が限界を迎え、量的金融緩和政策に踏み込んでいく可能性が強まっていく。