――会場内の非商業化が、逆に商業的価値を生み出すのですね。現在、ロンドン五輪が開催されていますが、商業的に注目すべき点はありますか?
小川氏:通常、オリンピックの財政に関する報告書が出てくるのは大会の翌年ですので、どういう財政事情であったかというのはそれを見てみないとわかりません。しかし、今回のロンドン五輪では、余程のことがない限り赤字にはならないでしょう。なぜならば、放映権料をバンクーバー五輪とロンドン五輪をセットにして販売しました。その販売価格が、北京五輪を上回っているからです。また、スポンサー収入についても北京に比べ下がるということは考えづらい。そのことを考えると収入は北京を上回る。
支出に関しても、ロンドン五輪の組織委員会が北京五輪を視察した際に、北京ほど豪華な運営や施設をつくらないと断言しています。競技施設は地元の負担にならないようなつくり方をするでしょう。
たとえば、水泳競技が行われる会場は、観客席が翼のようになっており、五輪の時には1万人収容できるようになっている。しかし、五輪後には、その翼を外し、観客席を大幅に減らすことができるつくりとなっています。これはできるだけ無理のない規模の施設として残せるように設計段階から考えてのことです。競技施設の建設に関しては、ロンドン五輪では競技から野球とソフトボールがなくなったので、その分の施設を新設する必要もありません。ですから、収支はよほど不測の事態がない限り赤字にはならないのではないでしょうか。
北京までは、五輪に関わる経費が右肩上がりに増えていたのですが、今回のロンドン五輪でようやく下がると思います。
小川勝(おがわ まさる)
1959年生まれ。スポーツライター。青山学院大学理工学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。プロ野球、北米4大スポーツ、オリンピック取材などを担当し、編集委員に。2002年に独立。著者に『10秒の壁――「人類最速」をめぐる百年の物語』(集英社)、『イチローは「天才」ではない』(角川oneテーマ21)、『幻の東京カッブス』(毎日新聞社)などがある。
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