2022年7月6日(水)

WEDGE REPORT

2020年11月17日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

ミャンマーを中国の影響下から引き剥がせなかった

 トランプ政権に象徴的に見られたように歴代アメリカ政権の東南アジアへの関心の長期低下は否定し難く、その間隙を衝いて、中国は東南アジアへの全方位外交を、しかも各国別に展開した。その典型例が、2016年にアウンサン・スーチーが政権を率いることになったミャンマーを中国の影響下から引き剥がせなかったことだ。「反軍政」「民主化」を掲げて国民の支持を勝ち取りながらも、スーチー政権の対中関係はタン・シュエ独裁時代(1992年~2011年)と劇的に変化したわけではない。

 いまミャンマーが必要としているのは高邁な理想ではなく、経済社会建設のための資金であり国内安定だろう。そのためにワシントンは(もちろん東京も)、どのような行動を起こしたのか。ロヒンギャ問題への対応を批判するだけでは、スーチー政権を中国の側に押しやるだけである。

 鄧小平、江沢民、胡錦濤、そして習近平と歴代中国政権は激しい権力争いを繰り返し、互いに異なる内政路線を掲げる。だが、アメリカに対抗し世界の覇権を目指そうとする対外路線に大差はなかった。東南アジアにおいて実現に向かって進む一帯一路は、その一環として捉えることができる。

 昆明を発し東南アジア大陸部の中央を南北に貫く泛亜鉄路(中線)工事は進捗し、2021年末には昆明とラオスの首都ヴィエンチャンは高速列車で結ばれる。現時点までに報じられている工事状況から判断するなら完成予定は前倒しされ、あるいは2021年7月――あたかも100年前の1921年7月に共産党が建党された――に完成するかもしれない。共産党建党100周年への、そして習近平政権長期化への“祝砲”となる可能性も考えておくべきだ。

進む鉄道建設

 ヴィエンチャンから南に向けて計画されているタイ中央部を南下しバンコクに繋がれる路線においても、遅々たる歩みながら基礎工事が進む。マレーシアでは超親中姿勢のナジブ政権(2009年~18年)が進めた中国との協力による巨大インフラ建設計画が一旦は停止されたが、2020年3月に発足したムヒディン政権によって復活されつつある。

 新型コロナ感染が武漢から拡大したにも関わらず、習近平政権は新型コロナ問題を逆手に取り、「放火犯が消防士に変じた」と強く批判されようが、厚かましくも「友好」や「人類運命共同体」を掲げながら「新型コロナ外交」を展開する。インドネシアもフィリピンも中国製ワクチン導入の方向を打ち出した。

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