全戦DH制は1985年以来
日本シリーズでのDH制度は1987年以降、隔年から毎年となり、パ・リーグの本拠地で採用して、セ・リーグの本拠地では使わないという現在の方式に変更された。今回の全戦DH制は1985年以来、実に35年ぶりだった。
ただし、ことレギュラーシーズンへの導入については、セ・リーグはこれまで否定的な立場を取ってきた。 最近では2012年、一部のセ・リーグ球団からDH制度を導入してはどうかという声があがったが、このときは別の球団幹部から強硬な反対意見が出て、結局立ち消えになったと聞く。
ちなみに、川上氏や原監督と同じ巨人OBの桑田真澄氏は、NHK-BS1『球辞苑~プロ野球が100倍楽しくなるキーワードたち~/九番打者』(10月19日放送)に出演した際、こうコメントしている。
「野球はやっぱり、投げて守って、打って走って、全部やって野球じゃないですかね」
また、今年2月に亡くなった野村克也氏も生前、原監督のDH導入論をこう斬り捨てていた。
「私はDH制導入時から、このルールには反対派の立場を貫いている。 そもそも野球は、9人で1つのチームを構成して戦うスポーツ。その大前提を破ることからして、おかしい」
私自身は、桑田氏や野村氏と同意見である。また、実現性に関して言えば、セ・リーグが来年早々にDH制度を採り入れることはないだろう。実験的に導入したとしても、交流戦や日本シリーズでセ・パの対戦成績に大きな違いが出てくるとは思えない。
しかし、来年も日本シリーズでセ・リーグのチームがまたも0勝、もしくは1勝程度で終わったらどうなるか。そのときは、野球は9人ではなく10人でやるスポーツへ全面的に移行しようという議論が本格化する可能性もゼロではない。
『プロ野球回想録』元日本プロ野球コミッショナー・下田武三著、ベースボール・マガジン社刊(1988年4月30日初版発行)
『野村克也の本格野球論 本物の野球はどこへ行った!』週刊ベースボールONLINE 2019年11月21日配信
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