赤坂英一の野球丸

2020年10月7日

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 首位独走でセ・リーグの優勝を決めても、日本シリーズで勝てるのか。2連覇を目前にしている巨人に、例年以上に重い課題がのしかかっている。昨年ソフトバンクに0勝4敗と圧倒されたように、パ・リーグのチームに一方的に敗れたりすれば、「またか」「やっぱりか」「セとパの実力格差は永遠に埋まらないのか」という批判、という以上に嘆きや諦めの声があがるのは確実だからだ。

(electravk/gettyimages)

 巨人の優勝決定は10月第3週あたりかと予想され、日本シリーズの開幕は11月21日。セ・リーグは今年、CS(クライマックスシリーズ)を行わないから、巨人は1カ月以上も実戦から遠ざかることになる。現状でも下位チームとのカードはすでに実質的な消化試合と化しており、優勝を賭けた真剣勝負とは程遠い。

 さて、そこで、原監督がポストシーズンの日本シリーズやCSで一方的に敗退した過去のケースを見てみると、今シーズンと極めて似通った共通項があることがわかる。以下の三点だ。

 ① レギュラーシーズンで独走優勝している。

 ② 早く優勝が決まったため、ポストシーズンゲームまでの期間が2週間以上から1カ月と長く、真剣勝負から遠ざかり、実戦の感覚が鈍っている。

 ③ その期間、相手チームはシーズンやCS第1ステージで真剣勝負を続けており、コンディションとモチベーションが上がって、チーム状態で巨人を上回っている。

 昨年の日本シリーズの4連敗は、この三点がすべて当てはまる。巨人が優勝を決めたのは9月21日で、2位には5ゲーム差。ポストシーズンゲームのCS第2ステージは18日後の10月9日から、日本シリーズは28日後の同月19日からだった。

 一方で、ソフトバンクはシーズンで壮絶なデッドヒートの末に西武に敗退。優勝をさらわれたあとも2位を確保し、CS第1ステージから勝ち上がらなければならなかった。その上、第2ステージは絶対に負けられない西武との雪辱戦である。

 いずれの試合も大変な熱戦となったのは、ファンならまだ生々しく記憶しているはず。いまさらながら、「日本一にならないと優勝した意味もない」という常勝チーム・ソフトバンクの意地と誇りを改めて見せつけた感もあった。しかも、相手が工藤公康監督の古巣で、1980~90年代に黄金時代を築いた〝元王者〟西武だったのだからなおさらだ。

 もちろん、その間、巨人がノホホンとパのCSの結果を待っていたわけではない。が、セのCS第2ステージの相手は、シーズン15勝10敗と最も多く勝ち越していた阪神。巨人の4勝1敗(アドバンテージの1勝を含む)は、楽勝とは言わないまでも、順当な結果だったことは誰もが認めるところだろう。

 その結果、日本シリーズでは巨人がソフトバンクに4連敗。のちに原監督はDH制がセ・パの実力格差の原因と主張したが、「それ以前に日本シリーズに臨むまでのチーム状態と勢いに大きな差があった」と、パ球団関係者やOB評論家は口を揃えている。

 CS第2ステージで4連敗し、日本シリーズ進出を逃した2014年にもまた三つの共通項が当てはまる。このとき、巨人にアドバンテージの1勝以外、試合ではひとつも勝たせず、電車道で土俵外に押し出した相手は、皮肉にも阪神だった。

 この年、巨人が優勝を決めたのは9月24日で、2位には7ゲーム差。CS第2ステージ開幕の10月15日まで19日間空いていた。

 一方、夏場の6連敗で一時3位に転落した阪神はそこから巻き返し、〝頭上の敵〟広島を僅か0.5ゲーム差で振りきって2位に浮上。本拠地・甲子園のCS第1ステージで広島をくだした勢いをそのままに、意気込んで第2ステージが行われる東京ドームへ乗り込んでくる。

 第1戦に1-4で敗れると、巨人の首脳陣の間から「今年の阪神はすごい。勢いが違うよ」と本音が漏れた。ここから3連敗して、第4戦の試合前になると、「おれ(コーチ)は頑張ってるよ。でも、試合で頑張らなきゃいけないのは選手なんだよ」「こっち(首脳陣)がいくら燃えても選手が燃えてくれないとどうにもならない」と、グラウンドのあちこちで、すでに負けを覚悟しているかのようなグチや嘆息が聞かれたものだ。

 あげく、本当に4連敗してしまうと、いつもなら顔を真っ赤にして怒る原監督までが、このときは淡々と敗因を分析。最後に「それではみなさん、お世話になりました」と帽子を取って頭を下げたものだから、すわ辞任かとネット上で騒ぎになった。実際は、単なるシーズン終了の挨拶だったのだが。

 なお、巨人がリーグ優勝した年に日本シリーズに進出できなかったのは、2007年以来7年ぶりのことだった。

 その07年の優勝決定は10月2日、2位との差は2.5ゲームで、首位を独走していたとは言えない。CS第2ステージの開幕は同月18日だから、16日の待機期間が長過ぎたかどうかも見方が分かれるだろう。

 しかし、共通項の三つ目、「相手チームのコンディションとモチベーション」となると、落合博満監督率いる中日も極めて高かった。シーズンは最終的に、優勝した巨人と僅か1.5ゲーム差の2位。落合監督のことだから、CSでいっちょう原監督を食ってやろう、ぐらいのことは考えていたはずだ。

 巨人が第1戦の先発を右投げの山井大介か朝倉健太と予想していたところへ、落合監督は左投げの小笠原孝を大抜擢。小笠原は阪神との第1ステージ第2戦で中継ぎ登板して中3日と、常識ではあり得ない異例の先発登板だった。

 当然、原監督をはじめ、巨人首脳陣はまったく予想していない。スタメンには谷佳知、二岡智宏以外、投手の内海哲也も含めて7人も左打者をズラリと並べていた。おかげで大混乱に陥り、第1戦を2-5で落とすと、3連敗して一巻の終わり、である。この年まではまだ、第2ステージでシーズン首位チームにあらかじめ与えられるアドバンテージの1勝はなかったのだ。

 このとき、中日のコーチにもらったメールは、ざまあみろ、と言わんばかりだった。

 「ケンカは先手必勝。最初の一発、小笠原の奇襲先発が効いたよ!」

 巨人としてはこのストレート負けの3連敗がよっぽど腹に据えかねたのだろう。翌08年から、CS第2ステージでは首位チームに1勝のアドバンテージをつけるべきだと主張。これが球界に受け入れられ、この年は晴れて日本シリーズに進出している。結果は就任1年目の渡辺久信監督率いる西武に3勝4敗で惜敗したが、非常に中身の濃い対決だった。

 巨人はこれまでショックや悔恨の残る負け方をするたび、何度も「制度を変えよう」という声をあげてきた。原監督の「DH導入案」も然り。こういう発言はそろそろやめたほうがいいと個人的には思う。

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