原監督は8度優勝して日本一は3度
さて、巨人が首位を独走して優勝した年、ポストシーズンで惨敗してばかりだったかというと、必ずしもそうではない。最大の例外が原監督1年目の2002年である。
このシーズン、巨人は2位に11・5ゲーム差をつけて9月24日に優勝。延長十二回の末に前田幸長の暴投でサヨナラ負けしながら、マジックナンバー対象チームのヤクルトが先に負けていたために優勝が決まった、という何とも締まらないフィニッシュとなった。
日本シリーズの開幕はそれから1カ月余り後の10月26日。当時はCSがなく、ファンも評論家も報道陣も「巨人はすっかりタガが緩んでいるのでは」と心配していた中、西武に初戦から4連勝して日本一に輝いた。
もっとも、この年は西武も巨人と似たようなチーム状態だった。2位に16.5ゲーム差をつけて、巨人より2日早い9月22日に優勝が決定。日本シリーズまで1カ月以上実戦から遠ざかっていたのだ。
その上、伊原春樹監督の投手起用が墓穴を掘った、という見方がいまでは定説となっている。正捕手の伊東勤が別の投手を推薦したのにもかかわらず、伊原監督は右肘を痛めていた松坂大輔をエースだからと第1戦に先発に指名。さらに、3連敗であとがなくなった第4戦にも中3日でリリーフ起用した。結果、松坂は2試合ともに巨人打線に打ち込まれ、4敗のうち2敗が彼の黒星となった。
ちなみに、今季原監督が更新するまで球団記録だったレギュラーシーズン通算勝利数1066勝の川上哲治元監督は、11度リーグ優勝し、V9時代(1965~73年の9年連続優勝と日本一)を含む11度のすべてで日本一を達成している。一方、原監督は8度優勝して日本一は3度だけだ。
CSやFA(フリーエージェント)制度など、今と昔では条件や環境が違うから、原・川上両監督の成績は単純に比較できない。ただ、いずれにしても、原監督が〝ドン〟を超えた名将と呼ばれるようになるには、何としても今年、日本一を達成しなければならない。
パ・リーグのソフトバンクとロッテの首位争いはまだまだもつれそうで、11月14~17日には1位と2位のCSも3戦先勝で最大4試合行われる。それほどの戦いを勝ち上がってきた相手に、巨人は勝てるのか、原監督はどんな手を打つのだろうか。
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