赤坂英一の野球丸

2020年11月4日

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 巨人が独走で2連覇を達成した今季のセ・リーグ、開幕前はDeNAが対抗馬の一番手になるだろう、と私は見ていた。実際、DeNAを優勝候補に挙げていたプロ野球OBの評論家も少なからずいる。巨人のコーチ陣からも、こう警戒する声が聞かれていたほどだ。

 「メジャーへ移籍した筒香(嘉智、現タンパベイ・レイズ)の穴がプラスに作用すれば、DeNAは強くなる。例えば、新井(貴浩)が故障がちで引退した2018年、(鈴木)誠也が以前にも増して逞しくなり、4番に完全定着して3連覇を果たした広島のようにね」

 アレックス・ラミレス監督が新4番兼主将に指名した佐野恵太の予想外の活躍により、この巨人コーチの懸念は一時、現実になるかと思われた。が、結果はご存知の通り、巨人の優勝が決まった10月30日、DeNAは10.5ゲーム差をつけられて4位に沈んでいる。

(razihusin/gettyimages)

 もっとも、ラミレス監督自身は今季の成績について、不甲斐なかったとは微塵も考えていないらしい。現に、10月24日、横浜スタジアムのカフェ・レストランで行われた退任会見では、「グレートなシーズンだった」と、こう振り返っている。

 「今季は数字を見ればわかるように、素晴らしい成績を挙げることができました。チーム打率はセ・リーグのトップで、12球団一です。同じチームで(佐野と梶谷隆幸が)首位打者のタイトルを争っていることも素晴らしい。チーム本塁打数もきのう(10月23日)までは巨人と並んでいた。(打撃ばかりでなく)チーム防御率もいい数字でしょう。みんなが優勝を目指して、頑張ってきた結果です」

 ラミレス監督の言葉に間違いはない。巨人優勝が決まった10月30日時点の数字を見れば一目瞭然だ。

 チーム打率2割6分6厘はセ・パ両リーグ1位(巨人2割5分5厘、セ・リーグ3位)。チーム本塁打数127本も両リーグ1位(巨人同数)。そして、チーム防御率3.68はリーグ3位(巨人3.39、リーグ1位)。

 確かに、いずれも巨人と比べて遜色のない数字を残している。7月初旬には首位・巨人を0.5ゲーム差まで追い上げ、この勢いなら優勝の可能性もあると思わせた。それなのになぜ、後半に失速してBクラスに転落したのか。ラミレス監督は退任会見でこう語った。

 「結果的に大きな差をつけられたのは、巨人との直接対決で勝てなかったからです。他のチームとの対戦ではいい成績を残していますから」

 ラミレス監督の言う通り、この退任会見を行った10月23日時点で、巨人との対戦成績は8勝12敗。勝負どころで巨人に白星を献上し、貯金を稼がせたのは事実だ。

 しかし、巨人が優勝決定を前にして足踏みを始めると、ここから3連勝して10月29日には11勝12敗とした。これはセ5チームの巨人との対戦成績で一番の数字である。この地力をどうしてシーズンの勝負どころで発揮できなかったのか、あとになって歯噛みしたDeNAファンも多いだろう。

 選手、コーチとして豊富な経験を持つある巨人OBは、「チーム力に際立った差がない以上、ラミレス監督の采配に問題があったと言わざるを得ない」と、こう指摘する。

 「要するに、ラミレス監督の野球にはいやらしさがないんですよ。走者が塁に出たら足で引っかき回したり、何をやってくるかわからないというプレッシャーを相手バッテリーに与えたり、といった怖さがまったくない。

 ラミレス監督の攻撃のモットーは就任1年目からずっと同じ。打者はとにかく好球必打、ファーストストライクを見逃さずにどんどん打っていけ、です。送るべきときにはバントできっちり送る堅さはあるけど、バスター、エンドラン、強攻策もあるぞと、揺さぶりをかける作戦なんてまずやらないんだから」

 ラミレス監督が機動力を軽視していたことは、DeNAのチーム盗塁数にはっきりと表れている。10月30日時点で両リーグ最低の29個と、巨人74個の半分以下。パ・リーグで優勝したソフトバンク97個の3分の1に満たず、リーグ盗塁数1位の周東佑京ひとりの49個にも及ばない。

 足を使った作戦が重視され、各チームともに走塁のスペシャリストを養成している現代にあって、DeNAの盗塁数は極端に少なく、時代に逆行していると言っても言い過ぎではないだろう。前出の巨人OBが続ける。

 「DeNA打線は強力だから、巨人バッテリーにしてみれば、一発長打には気をつけなきゃいけません。でも、走者がいる場面で動いてこないから、打者との勝負に集中すればいいんですよ。そういう意味では、あれこれ考えないで済むので、原(辰徳)監督にとっては楽な相手だった、とは言わないまでも、やりやすい相手だったとは言えるでしょうね。

 巨人は昔から、ゆさぶりをかけてきたり、裏をかいてきたり、足をからめてきたりする相手に弱い。実際、3連覇していた時代(2016~18年)の広島には、あのチーム特有の機動力やいやらしさに再三煮え湯を飲まされた。DeNAとの試合ではそういうストレスがほとんどないから、原監督としてはむしろ余裕を持って作戦を立てられたんじゃないですか」

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