さすがに、エネルギー問題の教科書といってもいいほど、近現代のエネルギーをめぐる歴史とその展開を科学、政治、経済、国際関係などあらゆる面から整理し、分析している。
福島第一原子力発電所事故や「アラブの春」、アメリカのシェールガス旋風など、直近の事象にも肉迫する。
私自身も世界の環境・エネルギーの現場を歩いてきたが、これまで取材した「点」の情報が歴史的な「線」となり、グローバルな「面」につながっていく感覚を得た。
何より、本書を教科書でなく上質の教養エンターテイメントとしているのが、いきいきと描き出される人物像である。過去、現在を問わず、転換点となる瞬間を切りとって活写しつつ、舞台をまわしていく筆力は、脱帽のひと言。豊富な口絵写真も、人類のquestを物語る臨場感たっぷり。分厚い上下巻も、わくわくして一気に読めた。
<2030年、世界の電力消費は倍増、エネルギー消費は4割増に! どのエネルギー源が「需要増」をまかなうのか?>
上巻の帯にあるquestionはそのまま、いまの日本に突きつけられている。ヘンリー・キッシンジャー元アメリカ国務長官がいうように、「国際政治、経済、世界中の諸国家に暮らすひとびとに強い影響を及ぼすきわめて重要な現代的問題を扱う本書を、あらゆる国家の政策決定者はかならず読み通すべきだ」。
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