2024年4月20日(土)

ちょっと寄り道うまいもの

2012年10月5日

 さすがに普通の食事に、キャビアは登場しない。特注となる。飛騨牛や朴葉味噌のようなお約束の料理も満足のいくものだったが、キャビアのために来たのだから、清水の舞台から飛び降りて。

 ホテル内にあるインド料理屋で焼かせたというナンに載せて。あるいはおだしをかけ、キャビアをトッピングしたお茶漬けで。チョウザメの身は刺身やたたきで。

 参考までにと、あれこれ食べ比べもさせてもらい、アムール系だという比較的大粒のそれに目を見張った。あれほどお勉強したはずなのに、知らない美味。聞けば、とある有名料理人のアドバイスで、上質な昆布だしをくぐらせるような工夫がされている。日本のキャビア。

 淡泊にして滋味深い刺身やたたきともども、そんな発見の喜びを感じる味わい。シャンパーニュや上質の白ワインと楽しむのも良かろうが、すっきりとした純米や吟醸の日本酒とも相性が良さそうな旨さ。国産の甲州種の白ワインとも良さそうだ。

 もちろん、高価である。輸入ものよりも高い。イスタンブールへの旅費に比べれば安いけれど。ただ、日本の新しい美味が育つプロセスを共有したい、一緒に喜びたい、そう思われるあなたにはお勧めしたい珍味である。まだまだ、現在進行形の美味。どのように育ってくれるか。そうそう、チョウザメの身の刺身か燻製とキャビアを載せた、親子丼なんて、どうかなあ……。

奥飛騨ガーデンホテル 焼岳
高山本線高山駅からバスで約70分、「奥飛騨ガーデンホテル焼岳前」下車すぐ
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根2498-1
☎0578(89)2811
焼岳すっぽん
☎0578(89)5945

◆ 「ひととき」2012年9月号より

 

 

 

 

 
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