2022年12月4日(日)

中国はいま某国で

2012年9月7日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科教授(前内閣官房参与)

2013年1月から安倍晋三首相退任まで、同首相の外交政策演説を起案。2005〜08年、外務省外務副報道官。先立つ約20年『日経ビジネス』記者。元ロンドン外国プレス協会会長。東京大学法学部卒。1957年、香川県生まれ。

 中国で、民生用ヘリの市場は20億ドルに上るという。そこでの足掛かりが欲しかったとの見立てがある。米国法制では罰金を科して終わりかもしれないが、渡った技術が実装される「Z10」は中国軍初の本格的攻撃ヘリだ。カノン砲、対戦車誘導ミサイルなどを備えるこのヘリが最も有用となる場面とは、台湾侵攻に際してであるのは疑いを容れない。日本の立場としては、到底一件落着とは言えない。

 ところでセスナの親会社はテクストロン。同社の傘下にあるのがベルだ。ヘリコプターで有名なベルは、「オスプレイ」をボーイングと共同開発したことで名高い。沖縄への配備で議論を呼んだ機体である。

 よもやそんな軍事技術が間接的にしろ中国へ流出することはないと見ておきたいが、このほどセスナは中国と合弁を組み、小型ジェット機を開発・生産することになった。合弁相手は中国航空工業集団公司(AVIC)。第五世代戦闘機の開発に余念がない当のその企業連合である。米側が与える電子制御技術など、渡ったら最後、軍・民の敷居はないと弁えておくべきだろう。両社合弁事業体には成都市も出資する。中国共産党との関係が生まれる。

 ホーカー・ビーチクラフトに17億9000万ドル出資し同社民生用航空機部門を傘下に収めようとしている北京卓越航空工業有限公司という会社は、その実態が分からない。ウェブサイトも見当たらない。成身棕という創業者は米メディアの取材に応えない。「ヘリコプター大王」の異名がある由だが、年齢などは不詳。分かっていることは、同社株の4割をもつ大株主が北京市政府の直営ファンドだということだ。

 セスナやホーカー・ビーチクラフトの技術が中国へ本格的に入る以上、中小型ジェット機で中国が主導国となる可能性が出てきた。型式認証基準など、中国の意向を無視できなくなる可能性もある。軍用に技術が流れる恐れは言わずもがなだ。

[特集] 米中関係の先を読む!
[連載]中国はいま某国で

 

◆WEDGE2012年9月号より

 

 

 

 

 

 

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