2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2012年9月19日

 「黒い餃子の女」のなかで、黒木は高級マンションに住むサラリーマンの妻を演じる。夫の大杉漣はイカ墨のスパゲティが好物である。愛人の井上和香のマンションでそれを食べ、そして自宅に戻って黒木に作らせて同じものを食べる。

 井上は筆と墨を売る銀座の店の従業員である。黒木がその店を何度も訪ねて、最高級の墨を買う。

 大杉と井上が愛し合うきっかけの約束の言葉は「シェアする?」。現実の場面は省略されて、卓上カレンダーにピンクのハートマークがついていく。大杉を玄関から送り出す井上をカメラが後ろから撮影して、スタイルのよい彼女の姿をクローズアップする。

 自宅に帰った大杉は、黒木がいつものイカ墨スパゲティではなく黒い餃子を作っているので、ちょっと不審な表情を浮かべる。サラダを取り分けながら、黒木はいう。

 「シェアする?」

 餃子を黒木は食べない。大杉は、スパゲティも一緒に食べなかったことを思い出す。

 黒木は、黒い液体が入った調理用の容器をみせる。井上の店で買った墨を、黒木が硯でするシーンがフラッシュバックする。

 「黒い娘。~二十四の瞳~」は、黒木が本人と同じ福岡出身の24歳の娘役を演じている。父親は独身の娘を結婚させようと見合い話を持って、上京する。食事の途中も上司や取引先からひっきりなしに携帯に電話がかかってくる娘をみて、そのまま福岡に戻る。

 父親が幼馴染と思われる大杉に電話する。大杉の娘は黒木の友人で同い年である。携帯電話で話し終わったシーンが転換して、ホテルで大杉と黒木がたわむれるシーンで終わる。

 弁当づくりのパートを演じる「黒いパートタイマー」、道路の脇に座ってカウンターを持ってリサーチの人数を数える「黒いカチラー」、かつて愛人だった男の息子の婚約者としてその家に現れる、整形美人の「黒いママ~結婚~」……

 それぞれ楽しめた。ドラマが転換するごとに流れる軽快な音楽もまた、市川映画における芥川也寸志に対するオマージュであった。

男性気質の娘役
女らしい男役

 黒木はいうまでもなく、宝塚の娘役のトップスター出身である。その養成所である、宝塚音楽学校の時代に、いくつかの例外はあるものの、男役と娘役に分かれる。


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