Washington Files

2021年3月1日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 中国はトランプ政権が過去4年、偏狭な「アメリカ・ファースト」を唱え、対外コミットメント軽視政策を進める間に、世界各地とくに東南アジアで着実に勢力拡大に乗り出してきた。バイデン新政権は路線転換にとどまらず、大胆な対抗策が求められる。それは米国版“一帯一路戦略”ともいうべきものだ。

(Arkadivna/gettyimages)

 中国は2013年以来、習近平国家主席の提唱する「一帯一路」構想を世界戦略の要諦と位置付け、積極果敢に推進してきた。

 それは、アジア~ヨーロッパからアフリカ大陸にまたがる「巨大経済圏」構築であり、英語名「One Belt, One Road Initiative」略して「BRI戦略」として世界で注目されてきた。

 そして皮肉にも、結果的にそれを後押ししたのが、とくに2017年以来のトランプ政権だった。同政権の下で、同盟諸国との関係に亀裂を生じさせ、国連各機関からの脱退などを通じ、アジア、アフリカ世界への中国進出のお膳立てをしてきたからにほかならない。

 この間の中国の対外攻勢ぶりとそのめざましい成果については、中国自身が自賛している。たとえば、王毅外相は昨年12月11日、重要演説の中で「2020年はわが国が進めるBRIなど外交面で画期的な年となった」と高く評価した上で、具体的に以下のように述べた:

 「わが国は過去1年、グローバル・ビジョンと主要国としての責任を認識し、習近平主席自らも諸外国首脳、国際機関トップらと64回におよぶ首脳会談、電話会談を行い、22の重要な国際会議にも出席した。世界的コロナ危機の最中にあっても、BRI面で幾多のパートナー諸国との貿易・投資協力関係の拡大を実現させ、その堅実さと強靭さを発揮した。対外投資はこの間に30%以上増加した……中国―欧州間の高速鉄道計画の下で1万回以上のサービス往来があり、貨物輸送でも前年比50%増の実績を積み上げた……第3回『中国輸出万博』には150か国から3600社以上の参加があり大成功を収めた」

 ワシントンの外交・国際問題デジタル誌「The Diplomat」も最新号で、トランプ政権下の外交姿勢と中国の立場について「過去4年、そしてとくに昨年1年間におけるアメリカの対中国競争力は著しく弱体化してきた。あいつぐ国際協定からの離脱、国内民主組織の蹂躙、コロナ危機への愚鈍な対応、国論分裂…これらの動きは、伝統的なアメリカ同盟諸国との新たな関係を中国の志向に合わせて構築し直す絶好の機会となった」として、中国共産党首脳部は、過去4年の間を通じ、国際環境がますます中国にとって有利となってきたとの認識を下してきたと断じた。

 それのみか、トランプ政権は習近平主席が去る2017年5月、北京で大々的に開催した「第1回BRIフォーラム」に、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のマット・ポティンジャー・アジア部長(当時)率いる代表団を派遣しただけでなく、以後も側面支援していく姿勢さえ示したこともあった。

 この点では同様に、BRI対応含め、中国の対外膨張に対し毅然たる態度を示すことを怠ったオバマ元民主党政権(2009-2017年)の外交姿勢も批判を免れない。

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